プロジェクトの経緯

About our project

セミは誰に食べられる?

「ジージリリリ…」「ミンミンミン…」「カナカナカナ…」「オーシツクツク…」

多くの方は,これらのオノマトペを見ただけで,「セミの鳴き声」であるとわかるでしょう.また, 夏休みにはセミ採りや羽化の観察,抜け殻採集をして遊んだという方も多いかと思いますセミという昆虫は日本人にとってそれほど身近で親しみ深い生き物なのです.

そんな身近なセミですが,実は昆虫の中でも独特な暮らしぶりをもつことで知られています.ご存知の通りセミは長い時間を地中で暮らし,ある時期になると一斉に地上に姿を現します.地上に現れたセミは鳥やクモ,カマキリをはじめとする様々な動物によって食べられます.セミは個体数が多いだけでなく,体が大きく栄養にも富むので,陸上の動物たちにとって重要な餌資源となっているようです.

セミと捕食者をめぐる研究の課題

セミは,その生活サイクルによって,毎年羽化する種と13年または17年おきに羽化する種(周期ゼミ)に分けられます.実は,セミと捕食者の関係を扱った研究のほとんどが,この周期ゼミを対象としています.しかし,周期ゼミは世界で北米にしか分布しておらず,セミの多様性のほんの一部にすぎません.

また,毎年羽化するセミを扱った研究についても,そのほとんどが,鳥をはじめとする脊椎動物を対象としています.

クモをはじめとする肉食性無脊椎動物は,その個体数の多さや分布域の広さから,セミの捕食者として無視できない存在です.しかし,従来の出版物においては,「ある種のクモがある種のセミを食べた」といった事例的な記載がなされていたにすぎず,複数種のセミとクモの間に成り立つ被食捕食関係を定量的に扱った研究は存在しませんでした.

SNS投稿からセミークモ被食捕食関係を探った

私たちは以前から,TwitterをはじめとするSNS上に,セミを食べるクモの写真が数多く投稿されていることに気付いていました.

そこで, TwitterやGoogle画像検索を利用し,「クモに食べられているセミ」の画像を集めることで,被食捕食関係を明らかにしました(Suzuki & Mukaimine 2022).

その結果, アブラゼミやミンミンゼミ,クマゼミ, ツクツクボウシをはじめとする様々なセミがクモに食べられていることが分かりました.また,セミ食いが多く観察されるクモは,オニグモやジョロウグモをはじめとする,垂直円網を張る大型のクモであることも分かりました.

<参考:セミ食いが多く観察されたクモ>

1位:オニグモ(30.9%)

2位:ジョロウグモ(22.2%)

3位:コガネグモ(17%)

4位:オオジョロウグモ(9.1%)

5位:アシダカグモ(3%)


しかしながら,Twitter上の投稿に基づく分析では,位置情報撮影時期が分からないこと,セミとクモのサイズの測定が難しいことなどの問題点がありました.そこで,統一された方法で全国から観察データを集め,セミクモの被食捕食関係を様々な視点から分析するために, 今回のプロジェクトを立ち上げました.


参加方法へ!


文献:Y. Suzuki & W. Mukaimine 2022. Prey-predator interactions and body size relationships between annual cicadas and spiders in Japan. Journal of Natural History, 55(43-44): 2749-2760.