強磁性体・反強磁性体・交替磁性体の磁気構造・マグノン分散・マグノン流
(a) 強磁性体:全スピンが一方向に整列し、(b) のマグノン分散は二次関数型でモードの数は1つ。左回り(L)のカイラリティをもつマグノン流が自然に生成される。(g)は上向き角運動量を左方向に運ぶマグノン流を示している。
(c) 反強磁性体:異なる副格子のスピンが反平行に配列し、(d) の分散は R・L が縮退した2本の曲線が Γ 点で線形交差する。漏れ磁場がゼロのため外部干渉が小さいが、マグノン流は互いに打ち消し合う。
(e) 交替磁性体:副格子が空間回転操作で入れ替わる特殊な補償磁性体。副格子の空間対称性のため、時間反転対称性が破れ、マグノン分散に (f) のようなカイラル分裂が生じる。結果として(h)のように、異なるカイラリティを持つマグノン流が期待できる。
(g),(h)の太い矢印はマグノン流が運ぶスピン角運動量の向きである。(b),(d),(f)の横軸は結晶運動量q、縦軸はマグノンエネルギーE。私たは(e)(f)に着目し、カイラル分裂したマグノンを持続的マグノン流源として利用可能かを検証する。
交替磁性体マグノン流
強磁性体のマグノンは常に一意のカイラリティをもつが、スピンが反平行な系(一般に補償磁性体と呼ばれる)ではカイラリティの有無は自明ではなく、物質の対称性が鍵を握る。 交替磁性体はカイラル性を有する補償磁性体の一つである。
マグノン流を実空間(左)と波数空間(右)で表した様子。
赤とオレンジのマグノン流(左)は、Rカイラリティの赤曲線で示されたマグノン分散(右)に対応。下向きスピン角運動量が左に運ばれる
青と水色のマグノン流(左)は、Lカイラリティの青曲線で示されたマグノン分散(右)に対応。上向きスピン角運動量が左に運ばれる
私たちは交替磁性体のカイラルマグノンを世界に先駆けて観測しました。
(a)&(c) MnTeの中性子スペクトル。 (a)のh = 1.33と(c)のl = -1.33は同じ波数(-1.33, 0, -1.33)であり、約2 meVのカイラルマグノン分裂が観測されている。(b)&(d) 計算されたマグノンのカイラリティ。赤色と青色は各々異なるカイラリティを持つマグノンを示している。灰色の実線および破線は計算されたマグノン分散。