ハンガリー
ホルバート・ジュジャンナ(セント=ジェルジ・アルベルト高校)
若井誠二(カーロリ・ガシュパール・カルビン派大学)
ハンガリー日本語教師会
カーロリ大学では、将来の日本語教職課程の復活を念頭においた大学教員と初中等教育機関教員との連携強化を目指し、2016年より「さくらネットワーク助成」を受けて活動を行っている。現在は、2020年度の実践研究論集発行を目指し勉強会を重ねているところである。これらの活動を通じ、ブダペストのセント=ジョルジ高校では、タイトなカリキュラムや学校・保護者の期待と、(それに相反する)日常会話に現れる異文化表現や異文化理解の困難性などについて学ぶ活動の両立についての模索を始めている。現在は、Z世代である生徒の特性を考慮し、異文化理解の活動にアプリケーションをどう組み込んでいくかという点で試行錯誤を行っているところである。そこで、本発表では、まず教職課程復活やその後を見越した活動の紹介を簡単に行い、次にセント=ジョルジ高校の現段階での取り組みについて紹介する。本発表を通じて、皆様より、さまざまなご意見やご指導をいただきたいと考えている。
セルビア
ルカ・ミロシェヴィッチ(ベオグラード大学文学部日本語専攻課程 博士課程)
本稿は、外国語として日本語を学習するセルビア人のためのコースで、日本語の現代詩を使用した授業を紹介する。生徒のレベルは日本語能力試験N3で、中級日本語である。「日本語普及プロジェクト」で行われたゼムン高校での授業を分析する。学習者の年齢は15歳から17歳までである。授業の教材としては現代詩(白石かずこ、谷川俊太郎、池澤夏樹、高橋睦郎)を用いたほか、フォークソングやポップを用いた。まず授業の構造、理論的なフレームを説明し、韻文の教材を用いた語彙や文法の練習のモデルを提示する。最後に、授業を受けた生徒の評価や印象を、アンケートの回答に基づいて紹介し、韻文の授業の長所と短所を考察する。
スロバキア
天野香寿美(コメニウス大学)
概して、コメニウス大学の学生は消極的である。物事に取り組んでも失敗した時のことばかり心配し、間違うことや知らないということを恐れ、隠したりもする。また、学年によっては知識や理解度が大きく異なり、授業進行を円滑に進める工夫が常に求められる。
そのような現状のなかでは、まず絶対に学生の発言や質問を否定しないことが肝要であり、小さなことでも学生を褒めることによって「間違っても大丈夫なんだ」「ダメだと言われないんだ」という安心感をもってもらうようにしている。また、授業はクラスの中程度理解者の理解度により進めているが理解度の高い学生が退屈しないよう慣用句や漢字等新しい知識の導入も絶やさず、どの学生にも「新しいことを学んだ」と充実感をもってもらえるよう工夫している。文法や会話表現だけでなく、言葉の裏にある日本文化や日本独特のシステムにも触れ、教材も固定せず、マテリアル使用による実際的な授業の実施や写真や動画の導入によりモチベーションを高めるよう努めている。
ハンガリー
小野久禎(エトヴェシュ・ロラーンド大学)
出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律(改正出入国法)が2018年12月に公布されたことに伴い、2018年から人材紹介会社が積極的に学生たちに日本での仕事の斡旋をするようになった。応募に際しては、日本語の能力を証明することが要求され、特に日本語能力試験でどのレベルを持っているかが要求される。日本語能力試験では文法知識を問う問題があり、学生たちが試験に合格するためには文法の学習が欠かせない。そのため、勤務校でも3年生から文法に特化したクラスを開設しているが、文法に特化したクラスを開設しても期待しているほど学生の文法力が上がっていないという問題を抱えている。本発表では、正確な文法知識を明示的に指導しなければならない外的要因を紹介しながら、実際の授業で直面している問題点を明らかにしたい。
ハンガリー
後藤将太(カーロリ・ガシュパール・カルビン派大学)
勤務先、ハンガリー、ブダペストにあるカーロリ・ガシュパール大学日本学科の自由選択科目である「上級会話」の授業における改善と今後の展望などについて考察する。
本授業は、2016年から新設され、日本からの留学帰りの学生や、JLPTで言えばN2程度の能力を持つ学生を対象とした授業である。因みに本授業は「上級会話」という名前通り、すでに上級的会話能力を持つものが、さらなる会話能力向上を図る、または会話能力を維持するということを目的とするのであって、上級話者を目指すための授業ではない。
授業ではあるテーマについて、日本人ゲストを交えて全て日本語でディスカッション(フリートーク)するという形式をとる。具体的には学生の1人がパネラーとして話し合ってみたいテーマとそのテーマについて話しあいたい理由を説明し、その説明を受けて各グループが話をし、まとめの時間で各グループがどんなことを話し合ったのかということを他のグループに報告する。1コマで2から3のテーマで話ができるように時間配分をしている。
2017年秋にブダペスト日本文化センターにおいて行われたハンガリー日本語教育シンポジウムでは、開設2年目の授業が1年目に比べてどれぐらい改善することができたかということについて発表したが、今回は3年目の本授業における取り組みを通じてさらにどのような改善ができたかということが話の中心となる。
ルーマニア
ルクサンドラ-ワナ・ライアヌ(ブカレスト大学)
本発表は、中・上級日本語の授業の改善という視点から、授業において発表者が何を行ったかを事例に即して検討する。具体的には、ブカレスト大学3年生の「選択科目授業」においての問題点とその解決策、また学習者の日本語やビジネスの現場への適応レベルを効率的に高めるための改善点について発表する。
まず、ブカレスト大学の3年生の日本語教育の状況、特に日本語教師が直面している問題を紹介する。
次に、日本企業を相手にビジネスを行うことを想定し、それに必要不可欠な「Eメールの書き方」を例として取り上げる。
日本語の授業において、「Eメールの書き方」を教える前に、3年生の対象者全員にまず教師宛に日本語でEメールを書くという宿題を出した。その後、その宿題のEメールにどのような間違いが多いかの分析を行った。そこからわかった改善点と改善しようと試みたがうまくできなかったケースを紹介する。
最後に、カイゼンという概念を常に意識し実施していくことが、日本語教育に不可欠なものだと強調する。
クロアチア
ステファニー・スィリ(ユライ・ドブリラ大学プーラ)
大学・大学院で日本語を専攻する学生にとって卒業論文・修士論文の執筆にあたって大きなハードルとなるのがそのテーマ設定、とりわけ研究目的の明確化である。かえて参考文献や研究データを日本語で理解するためには、その言語や各分野における専門用語の知識が必要である。この2つの課題を解決するために、日本語のニュースソース分析の実践を試みる。プーラ大学の日本語・日本文化の大学生の中にはダブルメジャーの学生もいるため、個々の学生の興味関心に即し、日本研究に関する専門的用語等を含んだニュースや記事を与え、読解・内容分析させ、その効果を検討する予定である。学生に日ごろから、社会の動向に目を向けさせ、問題意識を持たせることで日本社会への理解が深まるとともに、新しい語彙・表現・文章・コロケーションの知識を獲得することができ、日本語能力を向上させることが可能になる。
キーワード: ニュース分析、論文テーマ設定、語彙、読解、社会問題意識
ポーランド
末岡由紀(グダンスク工科大学)
当発表においては日本語学科の学生ではなく生涯学習として日本語を学んでいる学習者に対して、教師が持ち得る授業改善の視点―教材の選び方―の一例を紹介する。我々教師は「日本の漫画、文化、歴史に興味があるから」あるいは「日本文化を理解する一手段として」日本語を学習している人たちなどに対して、文法学習、ロールプレイ実践、練習問題,ディスカッション等とからめてどんな魅力的な授業ができるだろうか。とりわけ日本人教師においては「日本語は…」「日本文化は…」と日本関連の事象を紹介することにはやぶさかでないと思う。が、時には学習者の立場に立って発想を転換し「学習者の興味のある国日本で、学習者の国はどのように捉えられているのか」という観点から学習者の国に関連する事象について日本語で紹介されている資料をソーシャルメディア等を利用して紹介していき、またそのテーマについてディスカッション等を行うなら「生きている日本語」を学習してもらえ、生涯学習としての日本語学習の継続にも貢献できるのではないだろうか。
マケドニア旧ユーゴスラビア共和国
太田由可里(スコピエ聖キリル・メトデウス大学言語学部)
【ひらがな、カタカナフラッシュカード】画用紙でひらがなのフラッシュカードを作ります。あ段は赤、い段は青、う段は 緑、え段はオレンジ色、お段は紫色で文字を書きます。私は、必ず授業の初めにこのフラッシュカードを用いた発音練習をします。学生達はこのカードの色分け方法を、自分の教科書のページにも使い、大いに記憶する助けになったと話しています。 改善点については、青と紫の色が似ているので違う色を使った方が良いのかもしれません。
【カタカナの名前】学生に自分の好きなスター、歌手、バンド、アニメのキャラクター、本、映画の題名などカタカナで書いてくるよう宿題をだします。調べてきた名前・・・例 ハリー・ポッター
【助詞抜き絵本】ペイントを使って単純なお話のカラー絵本を作ります。助詞の部分だけ空白にしておき学生にどの助詞が入るかたずねます。
【漢字パーツ】漢英辞典の考え方からヒントを得ました。画用紙に漢字を書き、それをハサミでパーツに切ります。それぞれのパーツを再構築する過程で、学生は正確に漢字を書けるようになります。
【詩を使う】助詞や文法項目、オノマトペ、発音や拗音の指導に使います。谷川俊太郎の詩をよく使います。
【日本語の数え方】五味太郎の幼児向けアニメを使います。それは楽しくデザイン的にも優れたアニメで、日本語 の数え方を楽しみながら習得させるのに役立ちます。
ルーマニア
バラニ アレクサンドラ・ガブリエラ(ルーマニア・日本研究センター「アンジェラ・ホンドゥル」)
このようなテーマで、日本語学習者たちが無意識的に日本語を覚えることができ、日本語の従来の教え方の代替方法となり得ることを発表したいと思います。
課外活動で学んでいる学習者には自習をする時間があまりないものの、週一回のクラスで少しずつ上達したいというジレンマがあります。その対応策の方法の一つとして、教師が外国語を教える際に、学習者が言葉を覚えやすくなるように双方向的な教育法を使うことがあります。最も使用されている代替方法は、教師がマンガやアニメなどのメディアを使い、様々な概念を理解させることで、学習者たちがすぐに言葉を覚られるようにするという方法です。あるいは、認知度はありますが、あまり活用されていない折り紙を使うという方法です。折り紙には学習者の忍耐力と記憶力の両方を養うことができます。そして、この折り紙を媒体に語学を学べば、学習過程が双方向的になるので、学生たちは自然に二つの情報を同時に記憶することができます。どのような過程で折り紙を使い、日本語の勉強が容易になるか、またどのような分野に一番有効かということについて発表をします。