学校の中に保健室があるように、地域の中に保健室があって、医療のこと介護のこと、ちょっとした困りごとを相談できるみんなの看護師さんになりたくて、2019年から「暮らしの保健室なら」を開設しました。
場所にこだわらず、いつでもどこでも出会った瞬間から、暮らしの保健室の活動が始まります。
解決できることと解決できないこと・・・困りごとをお聴きします。
そして、解決できることは地域の専門家に繋ぎます。
苦しんでいるのは、医療介護の専門職も同じ・・・お互いの支えを強められるようにケアカフェで交流しています。
わたしの支えの地図
家族と友人と語り合うツールとしてお使いいただければと考案いたしました。
苦しいとき、人生に迷いそうになったとき、わたしの支えの地図が役立ちますように
やがてくる人生の最終段階での推定意思にも貢献できるのではないかと思います。
お問い合わせからご連絡くだされば、PDFで送らせていただきます。
出会った時に今ここからはじまる暮らしの保健室
小さな声で
…助けてください
動けなくなった高齢の女性がうづくまっている
…主人が家の中にいるから
彼女の示す家の玄関にゆくとベルを鳴らす前に夫さんがドアを開いて急いで妻のもとに
夫さんが彼女を立たせると彼女は重そうに足をひきづって再び歩き始めた
…どうしようもないです
疲れた表情のご夫婦
夫さんのお話を伺う
…これでもね。家内は陸上の選手だったんだよ
苦しみの先に見えた光
助けてと言える人が
家の外にたくさんいる方がいい
夫さんも助けてって言っていい
介護保険…様々なサービスはあるけれど
大事なことは、苦しみに気づくこと
その人の苦しみを聴き
解決できることは一緒に解決する
そして、解決できない苦しみは残り続ける
励ましやアドバイスなど通じない
だけど…こんなに苦しくても頑張れるのは、支えがあることに気がつく。
その支えは一つの灯り
桜満開の中
見上げるとたくさんの桜の花が私を包む
私ではなくて桜が私を見てる
その先に光を見た
地域包括ケアは満開の桜のよう…サービスがただ綺麗なだけではなくて、困っている人、苦しんでいる人を包み込む。大事なことは、サービスありきではなく、その先の光となる支えを一緒にみつけること
出会った時に今ここから始まる「暮らしの保健室」
二つの傘の下での暮らしの保健室
「綺麗だけど、たった一輪…ツツジかしら?」
花を見ていると、声をかけてくださったのは、70歳代くらいの女性
「そうですね。黄色で珍しく大きなツツジですね」
しばらく花の話をしていると、彼女は、膝の手術をしようかどうか迷ってる…これから手術前の検査結果を聴きに行くところだと…
コロナ禍の入院は面会も制限されて気持ちが進まない様子、膝の痛みだけでなくて、あちこち痛みはあって気分も沈むことなどを聴かせていただく
「ごめんね。こんな愚痴を聴かせてしまって…もう死んでしまった方がいいのかなって、娘に電話したのよ。でも、何も言ってはくれないから」
日々の暮らしの中で何気なく交わす会話を注意深く聴いていくとその人の苦しみを感じると同時に、支えとなる関係も感じることができる
さらに話を聴くとその人だけが語ることのできる美しい物語がある
「昔、まだ幼い子どもだった時に、祖父が老衰で亡くなったの。あの頃はみんなお家でみてたでしょう。氷が食べたいって言ったの。夏だったから…街まで父が氷を買ってきて、おがくずの中の小さくなったひとかけらの氷を手の温もりで溶かしながら、祖父に飲ませたの。みんな喜んでて、祖父も穏やかでした。それが最後に祖父が口にしたものだったんですよ。」
愛情溢れる物語は、今ここで彼女の70年のいのちの物語の中の一部分を切り取って語ったあと、とっても穏やかな表情をされた
してほしいこと…言葉にしてくれたらご家族にはできることがたくさんありますね。ひとりでがんばらなくていいですね。娘さんに助けてって言えばきっと助けてくださいますね。
「そうですね。手術、頑張りますね。聴いてくれてありがとうございました。」
「こちらこそ、ありがとうございました。どうぞ、お元気で」
初めて出会った名前も知らない人と対話することができるのは、この人の話を聴こうと思った瞬間があるから…
いつでもどこでも出会ったところが「暮らしの保健室」
春雨降る道、二つの傘の下での保健室