この度は、「有名人の死後に期待される心理社会的支援に関するアンケート」の調査にご協力いただき、誠にありがとうございました。結果の概要をご報告させていただきます。
私たちがテレビ等のメディアを介して有名人に対して築く関係性*に着目し、有名人が亡くなったときに人々が受ける心の影響と、対処行動について明らかにすることを目的としました。
*私たちは、たとえ直接会ったことがなくても、テレビやSNS等を介して、有名人に親近感を持ったり親しい間柄のように感じたりと、心理的な関係性を築くことがあります。
2022年2月1日~5月5日の間に、「有名人の死に関する学術調査用サイト」を通してウェブによるアンケートをおこないました。
2020年に自殺で亡くなったことが報道された有名人6名のうち、どの有名人について回答いただくかを1名選んでいただき、その有名人に対する気持ちや、報道後の行動などをお答えいただきました。
研究は北星学園大学研究倫理委員会の承認を受けました(21-研倫第45号)。
18歳以上の合計189名の方に参加いただきました。
回答に係る負担の大きさを考慮しながら回答いただき、特定の有名人について答えた100名の方の回答を分析しました。
その有名人について生前、積極的に見聞きしたり ポジティブな感情を持っていた方ほど、調査当時、有名人について考えたときの悲しみや落ち込み、混乱や困惑、不安などネガティブな気分を強く感じていました。
有名人の死に影響を受けて自分自身も「死にたい」と思った方や、有名人の死と関連するかは分からないものの「死にたい」と思ったことがあった方が、約10%含まれました。
訃報について話す
身近な人と話した 82名
同じファンと気持ちを共有した 5名
話を聴く専門家に話した 3名
メディアを使う
インターネットで調べた 64名
ニュースを積極的に見た 53名
その人が載っている雑誌や新聞などを買った 2名
SNSを使う
関係者のSNSを確認した 32名
訃報についてシェアした 18名
亡くなった人について気持ちを投稿した 17名
そのほか
その人の出演作・作品に触れ直した 28名
涙した 20名
亡くなった人に手紙やメッセージを書いた 2名
その有名人の生前、その人を積極的に見聞きしたり、その人に対してポジティブな感情を持っていた方ほど
報道後に涙を流していました
報道について身近な人と話をしたり、SNSでシェアしていました
その人の関係者のSNSを確認していました
出演作・作品に触れ直していました
「インターネットで調べる」ことや「ニュースを積極的に見る」こと、「死にたい気持ちになること」は、生前の有名人との関係性とは関連していませんでした。
有名人の自殺報道後は「死にたい」気持ちを抱く方と、有名人が亡くなったことに対する悲しみや落ち込みを抱く方に対して、別々の支援が必要であると考えられました。
訃報をSNSでシェアする行為は、シェアされた投稿を見る方に自殺の衝撃を広げるため、悪影響があることが懸念されています。しかしそういった行動には、有名人ともともと築いていた関係の強さや人々が抱く感情が関連する可能性がわかったため、特にSNSの適切な使い方を啓発していく必要があると考えられます。
今後は有名人が亡くなった後の多様な心理的支援についての研究と、具体的な実践をさらに進めていきたいと考えています。
この度は改めて、調査へのご協力を誠にありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。
2022年11月4日
髙橋あすみ・大井瞳「自殺が報道された有名人とのパラソーシャルな関係性と、死後の心理的影響及び対処行動に関する探索的調査」第46回日本自殺予防学会(2022年9月10日発表)
お借りした写真