クリーンエネルギー創造研究室
Clean Energy Creation Laboratory
バイオ資源を燃やさずに電力に変える!
Clean Energy Creation Laboratory
バイオ資源を燃やさずに電力に変える!
地域のバイオマスを利用した循環型社会の構築を目指し、バイオ燃料で作動する燃料電池の開発など、産学および国際連携の下、SDGsに貢献する高効率エネルギー変換システムの創出に取り組みます。
当研究室は、エネルギー変換や創エネを探求し、バイオ燃料で作動する高効率ゼロエミッション燃料電池の実現を目指します。熱力学をベースに化学平衡や電気化学プロセスを理解し、電極材料や触媒材料に関する基礎研究からシステム開発、さらには技術の社会実装まで、エネルギー、食品、自動車、材料、各分野の企業と密に連携しながら、持続的な社会の実現に貢献する研究に取り組んでいます。また、地球規模の脱炭素化の鍵を握る東南アジアに技術を広めて行く活動も積極的に進めています。
SOFCは、固体材料(そのほとんど全てがセラミックス材料)で構成された高温作動(600~900℃)の燃料電池です。次世代の高効率発電技術として期待されています。< 5 kWの発電出力で発電効率50%のシステムが市販化されています。
経済発展と人口増加が著しいアセアン諸国では、化石資源の需要が急増しており、地球規模の脱炭素化に向けた取り組みにおいて優先度の高い地域であると言えます。ベトナムにおいては、農林水産業が国内総生産量(GDP)の約2割を占めており、約2,000万人の住民が暮らすメコンデルタ地域が農業生産の半分以上を担っています。当地域では、農業残渣や水産養殖池から排出される汚泥等、バイオマス廃棄物の処理が課題であり、同時に、電力の安定供給も求められていますので、地域のバイオマス廃棄物を効率良く電力に変換して利活用できれば、環境負荷の低減に寄与できるでしょう。高含水率バイオマスを資源化する際の中核技術が、湿式メタン発酵によるバイオガス(メタン( 約60%)と二酸化炭素(約40%)の混合ガス)の製造です。バイオガスを利用したオンサイト発電技術として注目されているのが、エンジン発電機の倍の発電効率を誇るSOFCです。
バイオガスで作動するSOFCシステムを地球規模で普及させるためには、コンパクト化と低コスト化が必要です。当研究室で開発に取り組んでいる「ペーパー触媒」は、セラミックファイバーを紙状に成形して、そこにバイオガスから水素を製造する触媒粒子を分散させたものです。ペーパー触媒は、下図のように、燃料極(アノード)上に簡単に配置させることができるので、改質反応場(水素を製造する場所)とアノード反応場(水素が電気化学反応を起こして発電が行われる場所)を一体化させることができます。これにより、既存の改質器が不要となり、SOFCモジュールの簡素化を図ることができます。
Y. Shiratori, M. Sakamoto, Performance improvement of direct internal reforming solid oxide fuel cell fuelled by H2S-contaminated biogas with paper-structured catalyst technology, Journal of Power Sources 332 (2016) 170-179.
バイオガス中には、数十~数千ppmの硫化水素が含まれており、改質触媒やSOFCの燃料極を被毒し劣化させるので、バイオガスの脱硫は、SOFCの実用レベルの耐久性を達成するキープロセスになります。脱硫には一般的にゼオライト等の工業材料が使用されますが、地産地消の循環システムの構築を目指す当研究室では、籾殻とメタン発酵消化液を原料に、脱硫に使用した後、肥料として農地に還元できる循環型の脱硫剤の開発を進めています。
H. Setiawan, M. Sakamoto, Y. Shiratori, “Study on biochar as desulfurizer for SOFC application”, Fuel Cells, 21 (5), 2021, 430-439.
単に先端技術を開発するだけでは、地球規模で起こっている環境・エネルギー問題を解決することはできません。 “観察力”や“課題発見能力”が必要になってきます。これらの能力は、机上の学習だけでは培うことができません。世界を回り、現場を見て体験して下さい。そして、どんどん面白いアイディアを出して下さい。そのアイディアを実行に移すためには、幅広い視野でシナリオプランニングを行う必要があります。この時、異分野との交流の大切さが分かってきます。熱意を持って声を掛ければ、素晴らしい仲間が集まってきます。皆さんの柔軟な発想に期待しています。きっと社会に受け入れられるシステムを創り出すことができるはずです。
アクセス
クリーンエネルギー創造研究室
〒192-0015 東京都八王子市中野町2665-1
工学院大学八王子校舎4号館
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