第1回演奏会
田中統子 / 太田結梨
ヴァイオリン・ピアノによるコンサート
第1回演奏会
田中統子 / 太田結梨
ヴァイオリン・ピアノによるコンサート
2026.10.17. 第1回 演奏会
ヴァイオリン・ピアノによるコンサート
「回帰する旋律」
田中統子 / 太田結梨
2026.10.17(土)
開演 18:00 / 開場 17:30
アーク栄サロンホール
事前予約制 / 入場無料
【プログラム】
サン=サーンス:トリプティーク Op.136
C.フランク:ヴァイオリンソナタ イ長調
クライスラー:シチリアーノとリゴードン
サン=サーンス:ヴァイオリンソナタ第1番 Op.75
私の大好きな作曲家であるサン=サーンスのヴァイオリン作品を全て演奏したいと思い、演奏会を企画しました。意外にもサン=サーンスのヴァイオリン作品は多く、作曲された年によって異なる趣があります。今回は有名な交響曲である第3番「オルガン付き」と同時期に書かれたヴァイオリン・ソナタ第1番と晩年の作品であるトリプティークを取り上げました。それぞれ違う雰囲気はありながらも、サン=サーンスの透明感のある響き・明快さ・形式美を感じていただけたら幸いです。
~ヴァイオリン・田中統子(フライヤーより)
(ヴァイオリニストの田中統子さんより、演奏会にむけて寄稿いただいたので、以下に掲載します)
サン=サーンスと私 ー演奏会に寄せてー
田中統子
サン=サーンスの音楽に惹かれて
私は、サン=サーンスが大好きだ。
なぜ、と問われると、いつも少し困ってしまう。もちろん、旋律が美しいから、音色が華やかだから、技巧的でありながら耳に心地よいから――理由はいくつも挙げられる。でも、それらを並べてみても、私がサン=サーンスの音楽に惹かれている、その感覚をうまく説明できた気がしない。
サン=サーンスの音楽には、音の一つひとつに凛とした気品がある。華麗なのに、決して華美ではない。鮮やかな色彩が次々と浮かび上がるようでありながら、その奥にはフランス音楽らしい洗練と、緻密に組み立てられた美しさがある。その絶妙な均衡が、たまらなく好きなのだ。
彼の音楽には、人生を必要以上に深刻に語らないところもあるように思う。悲しみも、喜びも、情熱も、どこか涼やかな眼差しで眺めている。その距離感が心地よい。感情に飲み込まれるのではなく、それを美しい音へと変えてしまう。
その知性と優雅さに、私は何度も心を奪われてきた。
循環形式から見る二つのソナタ
今回の演奏会で取り上げる同時期に書かれたフランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調とサン=サーンス:ヴァイオリン・ソナタ第1番 ニ短調、この2つの作品には循環形式という共通点がある。
音楽には、一度登場した旋律が、何度も現れることがある。単純に同じ部分を繰り返すのではなく、最初に提示された旋律や主題が、別の楽章や場面にも形を変えて登場し、作品全体をつないでいく。このような作曲上の方法を「循環形式」という。
循環形式のおもしろさは、作品に一つの大きなまとまりが生まれることだと思う。別々の楽章を聴いているはずなのに、共通する旋律によって互いにつながり、一つの物語のように感じられる。
フランク:ヴァイオリン・ソナタでは、冒頭のヴァイオリンによって提示される循環主題がそのまま用いられることはなく、何度も姿を変えながら現れ、音楽全体が大きな流れの中で結びついていく。どこか哲学的で、内面へ向かっていく音楽だと思う。
それに対して、サン=サーンス:ヴァイオリン・ソナタには、もっと軽やかな空気がある。もちろん、そこにも深い感情はあるのだが、それを重々しく表現することはない。このソナタは、第1部(第1楽章と第2楽章)と第2部(第3楽章と第4楽章)で構成され、循環主題は第1部の第1楽章、第2部の第4楽章に旋律としてそのまま現れる。この作品が書かれた頃には、ピアノ協奏曲第4番 ハ短調や交響曲第3番 ハ短調が作曲されており、いずれも循環形式と二部構成を取り入れた作品である。この頃のサン=サーンスは、二部構成とすることで、循環主題による全体の結びつきを保ちながら、各楽章では自由な主題展開を可能にする試みをしていたのではないだろうか。
フランクが「一つの大きな物語」を聴かせてくれるとすれば、サン=サーンスは「次々に現れる美しい瞬間」を見せてくれるような気がする。
同じ循環形式のヴァイオリン・ソナタで、これほど異なる世界が生まれることが面白い。
どちらが優れているということではない。ただ、二つの作品を行き来しながら聴いていると、フランスのヴァイオリン音楽が持つ豊かさが、少しずつ見えてくるように思う。
そして、またサン=サーンスへ
そして私は、最後にはまたサン=サーンスに戻ってくる。その明るさ、その知性、その構成美。そのすべてが一つになって、独特の美しさを生み出している。
これからも、まだ知らない彼の音楽に出会っていきたい。
そのたびに新しい魅力を見つけ、また好きになっていくのだと思う。
(2026年10月2日)
会計報告
演奏会実費(確定分):¥70700(@¥1683)
寄付金(確定分):¥86400(@¥2057)
剰余金:¥15700
寄附金へのご協力、ありがとうございました。剰余金は、カネヴァス奨学ファンドに繰り入れ、演奏者への奨学金贈与の一部として充当しました。
当日来場者数:演奏者2名を除いて、42名の参加でした。ご来場ありがとうございました。