Computer Algebra(計算機代数)という名称は,グレブナー基底で有名な B. Buchberger によって名付けられたもので,1980年代から世界的に使われるようになった。歴史をさかのぼれば,物理や数学における式の計算という役割からその研究分野が始まったため,理論研究が盛んに行われるようになり,現在でも,他分野との深い関わりを持ち続けている。このため,計算機代数の理論研究者とその応用を考える諸科学の研究者が情報交換を行うことの意義は大きく,本研究集会はこのような交流を目的として計画されている。例えば,限量子消去 (Quantifier Elimination) と呼ばれる強力な手法がある。これは,「すべて (∀)」や「ある (∃)」などの限量子を含む不等式や等式の条件が実数を動く変数に対して成り立つとき,その変数を消去し,等価な別の条件式を導く技術である。現在,数理最適化や,制御系設計,自動回答システム等,産業界を含む諸分野で利用されている。限量子消去の計算理論は,可換環論や実代数幾何学と関係している一方,計算機資源の問題もあり,アルゴリズムの構築が重要な分野でもある。このような横断的に様々な分野に関連する手法もまた,計算機代数と諸科学の関わりとして重要と考えられる。これらのことを踏まえて,本研究集会において「計算機代数と諸科学の関わり」のセッションを設け,分野を横断する研究分野の発展に寄与したい。また,計算機代数の研究をより深めるため,例年通り理論・実装・応用の各研究者が互いの研究の最新状況についての発表を行うセッションも設ける。「公開型」の特性を生かして,計算機代数を共通キーワードとする様々な分野の研究者の交流をはかる場を提供したい。