動物の行動は遺伝要因による強い影響を受ける一方で、環境要因の影響も大きいことが知られています。行動を司るメカニズムを理解するためには、両者を統合的に捉えることが重要です。環境要因の中でも、近年とくに注目されているのが腸内細菌叢です。
ヒトの腸内には1000種以上、100兆個に及ぶ細菌が生息しており、栄養吸収や免疫調節、内分泌系の働きに加え、さまざまな身体機能や恒常性の維持に関与しています。また、腸には多くの神経細胞が存在し、その神経ネットワークは脳と密接に連携していると考えられ、「脳腸相関」と呼ばれています。
近年の研究により、うつ病や不安関連疾患、アルツハイマー型認知症といった多様な神経疾患と腸内細菌叢との関連が報告されています。さらに、動物においても社会行動や家畜化との関連が明らかにされつつあります。こうした進展は、次世代シークエンサーによる腸内細菌叢の網羅的・大規模解析が可能になったことによって加速しています。
本研究会では、腸内細菌叢と行動との関連解明を目指し、ヒトや動物種を対象とした最新の研究成果を先進的に取り組む研究者に紹介していただきます。参加者との活発な議論を通じて、脳腸相関メカニズム理解に向けた端緒とするとともに、新たな共同研究のきっかけを創出することを目指します。
対象は、この分野に関心を持つ幅広い研究者や学生です。特に若手研究者の積極的な参加を歓迎します。
ポスター発表
初日の口頭発表後にポスター発表を行います。参加予定の方、学生の方でポスター発表ご希望の方はご連絡ください。ポスターはA0程度で作成してください。
守秘義務
この研究会では、未発表データについてもご紹介頂き深く議論したいと思っております。そのため、参加者は守秘義務を負うことにご承諾いただきます。ご了解のほどよろしくお願いします。また、すべての発表の撮影、録音、また講演で得られた情報を演者の許可無くSNS等により発信することは禁止させていただきます。データを含まない研究会の様子などの発信はその限りではありません。活発なご議論になることを楽しみにしています。
旅費支援
今回は研究会予算の関係で、ポスター発表者の方々への旅費支援は締め切らせていただきます。大変申し訳ありません。
宿泊
宿泊は市内のビジネスホテルを各自でご予約ください。
情報交換会
ポスター発表後に、情報交換会(有料)を同じ会場で行います。活発な情報交換のためにぜひご参加ください
参加申し込み
参加申し込みはこちらのフォームからお願いします。締め切りは12月9日とします。
プログラム
12月23日(火)一日目
13:00 開会の挨拶(小出 剛)
13:00 研究会の趣旨について(後藤 達彦)
座長:森 宙史
13:10 小出 剛(遺伝研・マウス開発研究室)
「動物家畜化に関わる行動形質と腸内細菌の関連」
13:40 大野 欽司(名古屋学芸大学・教養教育機構)
「パーキンソン病の脳腸相関」
14:10 菊水 健史(麻布大学獣医学部・介在動物学研究室)
「イヌとの生活がもたらす身体変化と社会変化」
14:40 休憩
座長:中村 月香
14:55 栃谷 史郎(鈴鹿医療科学大学 保健衛生学部 放射線技術科学科)
「母体腸内細菌叢の次世代形質統御機構」
15:25 明和 政子(京都大学)
「乳幼児期の腸内環境と神経発達 ―予防医学的アプローチに向けた展望」
15:55 佐々木 伸雄(群馬大学・生体調節研究所)
「オルガノイド技術が切り拓く腸内細菌研究の新時代」
16:25 休憩
座長:藤原 一道
16:40 三上 克央(東海大学医学部医学科総合診療学系 精神科学)
「腸内細菌叢による宿主攻撃行動への影響」
17:10 高橋 阿貴(筑波大学・人間系)
「攻撃性の個体差をうみだす脳腸相関」
17:40 Kim JAEHA・森 宙史(遺伝研・ゲノム多様性研究室)
「トノサマバッタの行動様式変化と腸内細菌叢組成変化の関係性」
18:10 休憩
18:20 ~19:20 ポスターセッション
19:30 ~ 情報交換会
12月24日(水)二日目
座長:茂木 一孝
9:15 後藤 達彦(帯広畜産大学・グローバルアグロメディシン研究センター)
「ニワトリの従順性に影響を与える遺伝および環境要因」
9:45 豊田 淳(代理:谷島 優平)(茨城大学・応用生物学野)
「実験動物の飼料について考えてみませんか?」
10:15 新居 隆浩(広島大学・統合生命科学研究科)
「産卵鶏の腸-脳-生殖ネットワーク~腸内環境の悪化は卵を小さくする?~」
10:45 休憩
座長:高橋 阿貴
11:00 中村 月香(国立精神・神経医療研究センター・神経研究所)
「自閉スペクトラム症モデルマーモセットにおける視線行動と腸内細菌叢の関連解析」
11:30 茂木 一孝(麻布大学獣医学部・伴侶動物学研究室)
「マウスにおける幼少期の腸内細菌叢変化が行動発達に及ぼす影響」
12:00 総括(後藤 達彦)
12:05 閉会の挨拶(小出 剛)
ポスター発表
P-1 花輪 球太(東海大学病院医学部医学研究科)ビフィズス菌による幼少期のマウスの攻撃行への影響
P-2 西 純可(筑波大学)全脳のミクログリア枯渇はオスマウスの昂進した攻撃行動を抑制する
P-3 田中 日奈子(筑波大学)雄マウスの攻撃行動中のセロトニン神経活動への幼少期社会的隔離ストレスの影響
P-4 髙山 明日香(帯広畜産大学)発酵混合飼料の給与がチャボの糞便臭気、卵形質、従順性行動へ与える影響
P-5 安達 一(帯広畜産大学)ベツリンが反芻胃内Streptococcusの代謝へ与える影響
P-6 川内 大助(東京農工大学大学院連合農学研究科)ストレスにより誘発されるマウスの巣作り遅延現象
P-7 谷島 優平(東京農工大学大学院連合農学研究科)女性の腸内細菌叢とストレス誘発行動との関連解明を目指したモデルマウスの作製
P-8 遠藤 百恵(筑波大学)雄マウスの攻撃行動にパントテン酸投与が与える影響
P-9 村山 麻理香(茨城大学)大腸ムチンに着目した食とストレス感受性の関係の探索 ―社会的敗北ストレスモデルを用いた検討―
P-10 永井 智也(筑波大学)社会的挑発における背側縫線核セロトニンニューロンの活動計測
P-11 渡邉 己弦(東海大学医学部)Impact of Maternal Oral Dysbiosis on Offspring Gut Colonization and Early-Life Behavior
P-12 三井 鴻志郎(筑波大学ニューロサイエンス学位プログラム)外側視床下部―背側縫線核回路が雄マウスの攻撃的噛みつきを調節する