9という数字が好きだ。
本来「好き」には理由などないはずだが、ずいぶん幼い頃に理屈づけしてしまった。
何歳のころかはもう憶えていないが、9の件が、その後の自分の傾向を決定したのかもしれない。
自分の傾向。「好き」の背景をある程度、言語化せずにはいられない。
9は、0の前にある。
0とは、ひとつの到達点である。たとえ10でなくても、起点としての0だとしても、それはゴールだ。数字は0に到達して、また1から始まるイメージ。つまり、0は起点ではなく、基点。
そうした0の直前に位置する9は、つまり、最大の数字なのだと認識した。
いや、最大の数字だから好きになったわけではない。
目標に到達する直前の「寸止め感」に、スタイリッシュな勇ましさを感じたのだ。
100点なんて目指すものか。満点などダサすぎる。
99点こそが粋なのだ。
つんのめるように挑んだ末に、1点を失っている。
大人になってから、失点ということばを知った。
本来の意味とは違うが、失点という字面と響きに、9を見た。
人生は失点の連続だ。
だが、満足するよりも、一歩前の時間のかっこよさを忘れずにいたい。