ずいぶん前から決まっていたプロジェクトが秋から冬にかけて一気にかたまってしまい戸惑っている。わたしの仕事は急な依頼が多く仕事が集中することには慣れているが、それらは短期決戦にすぎない。ある季節だけ乗り切ることには一定の自信があったが、長期的なプロジェクトの乗り合わせはどうも勝手が違うようだ。

友人の画家のアートカタログの責任編集、その個展にあわせたトークへの登壇。美術は好きだが、仕事として取り組んだことはなく、やってみると映画とはどこか勝手が違う。取材・執筆はもちろん、撮影や誌面コンセプトも手がけているため、俯瞰的に考え、そのようなミーティングも重ねる必要がある。初めての体験に高揚するが、その分、脳が疲れている。それでも、自分が撮った写真がダイレクトメールの表面に使われたり、カタログの中身や表紙が斬新なものになりつつあることには大いに満足している。

依頼をいただき、伊豆の松崎町というところでセレクト上映会をおこなうことになった。作品は2本、すんなり決まったが、映画を自主上映するための諸々の手続きを全く知らず、一から手探りで始めていった。上映の具体も初体験。地元のスタッフの方々とまるで文化祭の出し物を構築するように手作りで進める過程はとても愉しい。だが、立場上、自分が指示を出していかないといけないため、あらためて自分にはプロデューサー的な資質がないことを思い知らされている。リーフレットの執筆はこれからだ。

そして、初めての自費出版。夏には5年ぶりのノベライズ執筆もできたが、こちらは約1年がかりの作業。この四半世紀に劇場用パンフレットに寄稿した作品評だけを101編収録したものだ。若い編集者におんぶにだっこ状態。彼の紹介で優れたデザイナーと仕事が出来、そのデザイナーの紹介で素敵なイラストレーターとも巡り会えて、とにかく書物として最良のものを創っている実感とときめきがある。印刷所の方との打ち合わせもエキサイティングで、自分の本だけに決めなければいけないことが山のようにあるが、悩みながらも全部を満喫している。著名な7人の方にコメントを依頼し、そのうちのおふたりとは書店で対談イベントも開催する。

新潟のミニシアターが開館39周年を記念して三浦春馬の主演作を2本上映するのに際し、約9000文字の俳優論を執筆した。これだけ長いものを書くのは久しぶりのことで、ざっくばらんに言えば、骨が折れた。こんなに長いものを書くことは今後ないだろう。上映後はアフタートークもする。そちらはいつも通りルーティンワークのおしゃべりだが、劇場では出来上がったばかりの本を販売もする。パンフレットのレビューを集めた本なので、やはり映画館に置いてほしい。来年は、全国のミニシアターとセレクトショップのようなこだわりの本屋さんを渡り歩き、ゆっくり時間をかけて自分の本を売っていきたい。

忙しいから、ではなく、たくさんの人たちと時間をかけて作業することに戸惑っているため、相田冬二があと何人かいてくれたらとも思うが、こうして書いてみると、歓びのほうがはるかに大きい。どのプロジェクトもまだ一つもかたちにはなっていないが、すべてをやり遂げたあと、この戸惑いがどのような表情を迎えるのか。それがいちばん愉しみかもしれない。