母の三回忌。『きのう何食べた?』にも登場する上野の伊豆榮でお腹いっぱいに美味しく鰻をいただき、東京国立博物館で「特別展はにわ」を観た。来たいと言い出したのは夫の方なのに、スマホがはにわの写真だらけになったのは、わたしの方。
慣れないヒールで歩き回ったせいで、足の疲れが取れずに迎えた日曜日。痛むアキレス腱をブーツに押し込んで、日比谷の東京會舘へ向かう。今日は大学時代の同級生6人とアフタヌーンティー女子会。およそ1年前、肌を整え髪を切りオシャレしてディナーショーのために向かった場所には、少しカジュアル過ぎたかも?ちょっと気になるけどまあいいか。
久しぶりな気も、そうじゃない気もする邂逅。席に通されると、飲み物のメニューには「ダージリン」や「アールグレイ」といった定番の隣に、見慣れないカタカナが並んでいる。舌を噛みそうな名前の紅茶を頼んでみた。母の話もはにわの話もディナーショーの話も封印して、学生の頃の話と子どもの話で盛り上がる。見ているだけでも楽しいケーキやスコーン、香り高い紅茶が再会に彩りを添える。
いったい何時間が過ぎたのか。気がつくと風は来た時よりも吹きすさんでいる。辺りは真っ暗。
ん?何の用で集まったんだっけ。ああ、そうそう。ゼミの創設50周年記念誌を受け取りに来たんだった。
ページをめくる。懐かしい笑顔が飛び込んでくる。新年会やりたいって言ってなかったっけ?どうでも良い話をしながら、ゼミ対抗ソフトボール大会の思い出を何か書いてほしいと頼まれたことを思い出す。無駄に上質な紙を何枚もめくる。
あった。だがそこに載っていたのは勝手にぶった切られて前後を入れ替え、余計な説明文が挟まれた似て非なるもの。手を入れるなら連絡をくれよ。素人物書きの嘆きを胸にしまい込み、新年会の話題に戻る。ケーキの味も、紅茶の香りも、もう分からない。
コートのファスナーを閉めずに外へ出た。寒さは感じなかった。
新年会の出欠はいつまでに回答するんだったか。痛む左足を少し引きずりながら駅へと急いだ。