左足が膝まで雪に埋もれて、動けない。
子どもたちも仲間もみんな、先に行ってしまった。
ふかふかの雪が積もったゲレンデのど真ん中。スキー板を踏んでいる感覚はまるでない。さてどうしたものか。しばらく足を前後に動かそうとするが、びくともしない。
わざと横に倒れ、坂に寝転がり、どうにかこうにか足を引き抜く。何とか立ち上がって滑り降りられた。
1年の最後の日曜日を白馬のゲレンデで過ごすようになって、20年以上経つ。「とにかく楽しく安全に」をモットーにしているので、圧雪されていないところには入っていかない。そんな冒険は上級者のやることだ。
尋常じゃない量の雪。いつもはちゃんと固められているバーンには、後から後から降りしきる柔らかな雪が積もっていく。このゲレンデのこの場所で膝まで埋まったのは初めてだ。齢50の初体験。出来ればもうちょっと足腰が頑健なときにしてほしかった。
何とか滑り降りた後も、雪は激しくなってくるばかり。ゴーグルは曇っていないのに前が見えなくなる。お風呂が恋しくなり始める。1年に1度、誰かが用意してくれる熱めのお風呂にのんびり浸かる日曜日。誰かが用意してくれる美味しいご飯をゆっくり愉しむ日曜日。やらなきゃいけないことはしなくていいはずの日曜日。好きなことだけしていればいいはずの日曜日。
宿のご主人に頼んだお迎え時間は、夕方4時。
まだ3時にもなっていない。だがもう滑っていても心が躍らない。
そろそろ、迎えに来てもらおうよ。
下まで降りたら、みんなに提案してみよう。