新宿駅の南口はストリートミュージシャンのステージだ。向かいはバスタ新宿。大きな荷物を抱え、誰もが何処かに急いでいる。足を止める者は少ない。それでも路上の音楽はやまない。バス乗り場に向かう途中、歌や演奏は聴かないが合間のMCには足をとめて聞き耳を立ててしまう。歌詞は標準語だが、関西訛りの若者がいるとハッとなる。奈良から上京し、摩天楼に囲まれてから、生の関西弁はノスタルジーを帯びた音楽に変わった。南口は上京した者が最初に触れる都会の風景。高層ビルが押しくらまんじゅうの西口、ネオンが魔性に微笑む東口より、風の迷路である南の空に新宿を感じる。