ブルックリン・ブリッジから見るマンハッタンの摩天楼、映画『台北暮色』の忠孝橋から眺める台湾の街並み、太左衛門橋から見下ろす道頓堀。橋から望む都会の風景が好きだ。喧騒のなかではなく、少し離れて街の動脈や静脈に触れるほうがしっくりくる。神田川が流れる面影橋から見る新宿は下町感が強くて味気ない。田舎から上京した者として、都会は身近な存在ではなく憧れであってほしい。大空と高層ビル。不釣り合いなグラデーションが刹那と永遠を分け与えてくれる。橋は日常と非日常にかかるインフラ。非日常を求めながら、日常を愛する。そうやって寄るべなき日々を繰り返す。来年、12年住んだ新宿を離れ故郷の奈良へ帰る。大和川の橋から三輪山を眺める生活。4年間は田舎暮らし。その先の風景はわからない。再び新宿に戻ってくることがあれば、どんな橋が架かるだろうか。