コンビニは日本一のワインショップである。まだワイン愛好者からは馬鹿にされがちだ。しかしコンビニ限定のワインを個人の店で仕入れた場合、仕入れ値が倍以上になるものが多い。大阪のショップ経営者によると、ニュージーランドの白ワインの販売価格は3千円から4千円台。同じ質のワインがコンビニでは千円台で並んでいる。大手企業の資本力と努力。0.1秒を削りだす長距離ランナーのような孤高で値段を削っている。


毎日23時に新宿の仕事場が閉まるとツマミを買う。徒歩15分の帰宅途上に6つのコンビニ。マラソンランナーを沿道で励ますように、やさしい光で帰途を照らす。一日の終わりを美味で癒してくれる。アパートの鍵を開けると奥に見えるワインセラー。中にはコンビニワインが待っている。鍵のない扉をガチャっと開けると「おかえり」が聞こえてくる。肴と葡萄酒のお見合いが始まる。そうして、僕の題名のない日常は幕を閉じる。