小学5年生の松田光正くんへ
はじめまして。私は新宿に住んでいるYAMATO(ヤマト)といいます。あなたが大好きな『シティーハンター』の冴羽獠が住んでいる街です。そちらは三輪山に囲まれ、ウグイス、ひぐらし、コオロギが鳴いていますね。「奈良に旨いもん無し」と言われますが、ご馳走は美味しい空気と自然の音楽です。
この手紙はちょっと先の未来から書いています。そちらは平成6年ですが、こちらは違う呼び方の時代になっています。なに言うてんねんコイツ、と思ったでしょうが最後まで読んでください。
阪神タイガースはなかなか勝てませんね。私の時代では日本一になりましたよ。新庄剛志は別のチームの監督をしています。あなたが待ち望んでいる野球のワールドカップも何回も行われています。ステキな未来ですよ。
今あなたは苗字も名前も大嫌いですよね。安心してください。もう少し大きくなったとき、どちらも大好きになります。信じられないでしょうがホントです。あなたが出逢うひとたちが世界を変えてくれます。
私は先月、父が他界しました。子どものころは毎日喧嘩をしていましたが、私がどこにいようと何かあればすぐに駆けつけくれる人でした。あなたのお父さんに負けないくらい愛情が深い人です。毎日お父さんとキャッチボールできるあなたが羨ましい。
お父さんが作ってくれた三輪そうめんもたくさん、たくさん頂きました。世界でいちばん食べたと思います。世界中の誰よりもファンです。
ひとつお願いがあります。私は一度も、そうめんの御礼を言ったことがありません。私の代わりに伝えてほしいのです。この手紙を見せるのではなく、あなたの口からあなたの声で。どうかお願いします。
美味しい三輪そうめんをありがとう。いつか、必ず。また頂きます