10月生まれの僕は秋が4番目に好きな季節だ。夏と冬、最も強烈な四季にはさまれる中間管理職。美術館の企画展と次の企画展の間のような小休止。焼けた肌と疲労から回復する再生の季節。夏を赦し、厳しい寒さに向かっていく。
秋は夕暮れというが、暑さが溶けて涼風が撫でる夏のほうが気持ちいい。芸術の秋なんて誰が言い出しのか。アートに季節は関係ない。なんなら春や夏や冬のほうが好きな映画や音楽が多い。食欲の秋なんていうが、秋のパスタはボスカイオーラくらい。冬のスープパスタ、夏の冷製パスタほど特別感はない。キノコなんて年中食べられるから、新玉ねぎや春キャベツ、菜の花のペペロンチーノほど限定感もない。読書の秋?物書きとしては年中読んでもらいたい。スポーツの秋なんて、春のWBC、夏の甲子園、冬の箱根駅伝を忘れている。山登りをやっていた頃は紅葉になると山にひとがごった返し、はやく雪が積もらないか待ち焦がれた。
他の季節ははじまりと終わりを感じるが、秋は最初から最後まで秋。いつの間にか消え、空虚が飽和している。秋は「あ」から始まる季節。生まれたのも秋、極真空手の門を叩いたのも秋、上京したのも秋、エヴェレストで過ごしたのも秋、文章教室がはじまったのも秋、物書きとして独立したのも秋。
秋に呼ばれたのではなく秋に追われるように何かを始めていた。秋に人生を生まれ直し、秋に踊らされてきた。きっとこれからも踊り続ける。僕は秋が4番目に好きだ。