雲ひとつない青い空、煌めく海と真っ白な橋が窓いっぱいに広がる冬の初め。
祝宴は佳境を迎えた。
遠い日の花火を思い出していた。閃光、そして音が遅れて聞こえてくる。家で一緒に見ないかと誘われたのは数日前の園庭。慣れない送り迎えに緊張感いっぱいだった頃。それでもお招きを受けてみようと思ったのは、彼女の携帯についていた小さなペコちゃんがずっと気になっていたから。しばらくベランダに出ていた子どもたちはいつしか涼しい部屋に戻り、麦茶をくっと飲み干すと二人の世界で遊び出す。ゆっくり流れる居心地のいい時間。その日曜日をきっかけに私たちはよく一緒に過ごすようになった。笑って泣いてけんかもして無我夢中で過ごしたあの頃。紫が似合うよくしゃべる女の子とそれに負けずおしゃべりな男の子、そして彼女と私。
雲ひとつない冬の日、紫の女の子は門出を迎えた。フラワーシャワーのように降りそそぐ祝辞。私の隣にはおしゃべりな男の子、そして末席には黒の和装で楚々としている彼女。うれしいはずなのにさみしいような難しい感情がキャンドルと一緒に揺れる。そもそもさみしいと言えるほど最近はそばにいられたわけでもなかったじゃない。着慣れないドレスに胸の内を押しこめて私はすんとしていた。
やがて暗転した室内に聞き慣れたイントロが流れる。
二人を作ってきたものたち、というタイトルのスライド。
浮かび上がるあの頃の一片にはトンボの甚兵衛と金魚の浴衣。
張りつめていたなにかがゆるむ。
キャンドルの灯がにじんでいく。
手さぐりで、それでも大切に育みたくて懸命に重ねた時間。この選択は正しかったか、その分かれ道はそれでよかったか。正解なんてわからない。悩みながら、それでもできるだけ幸せの手ざわりをあげたくて、もがいたりあがいたりを共にして分け合った私と彼女のあの日々。そんな私たちの形にならない空気みたいなものをいっぱいに吸い込んで小さきものたちはいつしか大人になった。そして今、新しい扉を開けてゆく。女の子の幸せに溢れた泣き笑いに、大丈夫だったよ、ありがとう、と肩をたたかれた気がした。どこまでも長く引くドレスの裾が余韻とともに私の横を通りすぎていく。
祝宴がまもなく終わる。
目を合わせたら泣いてしまうものね。
最後まで茶化して結局一度も向かい合えなかった私と彼女。
フロアに響くback number の「日曜日」はそんな私たちを優しく包みこんでくれていた。