好きな季節


コバルトが目にしみますね

誰だって秋はひとりですね


カサカサと音を立てる乾いた葉っぱを踏みながら歩く。新たな拠点を得た大学が私の街を去り、跡地が私たちのかっこうの遊び場でもあった時代。それを横目に学校に向かう。通学路の並木道はどこまでも黄金色。空はどこまでもコバルト。赤いランドセルがいやで、入学からの折り返し地点あたりから帆布のショルダーバッグで登校していた。


おはよう、と友達とあいさつを交わしてなんとなくまとまって歩いていく。毎日毎日ぼくらは鉄板の、と歌う友達の後ろでひとり鼻歌を歌う。友達と遊ぶのは楽しい。毎朝おはようと言えるのは素敵だ。だけどね、秋はひとりなんだよ。心の中でつぶやきながら私は歩いた。


家に帰るとラジオから曲が流れた。母は、もっと子どもらしくて明るい歌を聴きなさい、と言う。だから私はひっそりと好きでいた。父が買ってくれたトランジスタラジオにそっとイヤホンを差す。母は赤い筆箱や明るい音楽やパフスリーブのブラウスを好む。私はコバルトが好きで、デニムのスカートが好きで、メジャーよりマイナーな曲調が好きだった。でも、言わない。


自分が生まれた季節が好きだ。実りは多く、月も景色も美しい。違う。そんなんじゃない。うまくくくろうとしても次から次へと断片ばかりが押し寄せてくる。私の原風景。そしてコバルトの季節…