駅を降りるとタイミング悪くバラバラと雨が落ちてきた。街路樹が青い光をまとう冬の初め。仕方なく駅からすぐのカフェにかけ込む。ついさっきまで友人と二次会の喫茶店にいたから、お腹もカフェインもいっぱい。オーダーしたブレンドは雨やどり代、口をつけずに持ち帰ろうとぼんやり考える。テイクアウトのカップを受けとるころ、予期せず珍しく電話が鳴った。平静を装いながら、いつもとは違う声色。これは切れないと長年の勘が働いた。なんてタイミングと苦笑いしながら、とっさに雨の中店の外に出た。そんなに寒くないのが幸いだ。


少し遠くへの赴任を打診されたらしい。心の準備のなさと戸惑いが伝わる。一人になり、とりあえず連絡してきたのだろう。返すのは相づちだけにする。とにかく静かに耳を傾ける。雨が小止みになるタイミングで軒先を離れて歩き出し、一通り話が終わる頃家に着いた。じゃあねと切る。手の中の冷めかけたコーヒーと、やけに静かな部屋。淡々と帰宅後のルーティンをこなして、寝た。眠れた。そんな自分にホッとする。


家族を送り出すのは何度目だろう。心も身体もこれまでいくつもの段階をふんだ。これだってその一つ、よくあることだ。波紋のような別れが少しずつ中心から広がって遠くなっていく。そんなことにも慣れていく。私はずっとまんなかにいる。


来たる新年度、カレンダーには楽しい予定や計画がいつもより多く並んでいる。ぎゅうぎゅうは苦手なくせに、楽しくても私は私の予定に疲れるくせに。なぜなのかわかっている。その危なさも自覚している。楽しい、大丈夫、と言いすぎないように、穴を抱えて坂道を下ってしまわないように、心でちゃんとブレーキは握っておく。


その少し先、半歩先の未来、目を上げた私には何が見えているだろう。日々をこなしながら、ふとできたお休みにこれまで縁がなかった遠い街を笑顔で訪ねているだろうか。そうだといい。そしていつもと変わらず、まんなかでちゃんと立っていられる私だといい。