「タイプロ」にハマった。事後ながら一気見。現役アイドルグループが企画したメンバー追加オーディション。0-1ではなく追加補充という企画はさながら企業の中途採用。即戦力を求める前代未聞の新鮮さは刺激的すぎた。何度かの挫折を経てもなおエンタメの夢を追い続けこのチャンスにかける人たちと、自ら起死回生の思いで仲間を探すメンバー。どちらも本気。三十路手前の結構いい大人までが幾重にもなる課題に取り組み汗と涙を流す姿が沁みる。



その中盤、合宿を兼ねた審査の過程、主催メンバーが候補生に夕食としてふるまったのがカレーライス。手つきを見れば特段料理が得意そうでもない彼ら、にんじんの切り方さえ危うい。ともあれ、無骨な具材が寸胴で煮込まれていく。



宵の口、屋外でカレーを囲む。ねぎらいをかけながらサーブ、全員で椅子を並べてアウトドアな食事。ギラギラも上下もなくみんながカレーでつながる。緊張がほぐれた無邪気な談笑と会話。なんていい顔するんだろう。そう、正解。



カレーってそんな食べ物だ。おしゃれじゃなくていい、スパイスにこだわらなくたっていい。だけどカレーには小さな物語があり、人を笑顔に、饒舌にする。それは時に日常、あるいは週末の特別。だけどその日の記憶の温度が宿る不思議な料理。



この食事がカレーでよかった。本気で仲間を探す彼らとそこに本気で臨む彼ら。そんな彼らをつなぐのがカレーだからこそなお愛しい。忙中有閑、食べ終われば再び練習、そして振り落とされる現実が待ち受ける。結果は残酷だ。でも、そうだとしても、この夜のカレーライスを彼らは一生忘れないだろう。