MY HOME

皇居を囲む円の9時のあたりから西に伸びる沿線のスタジアム、久しぶりに足を運んだ。つい数日前のことだ。息子が幼い頃出会った場所。あの頃の数年は恋人の蜜月期間。ここが拠点のチームの試合に欠かさず通った。タオルを掲げ、応援のチャントを口ずさみ、大人顔負けに野次も投げかける息子をたしなめながら、ゴールの瞬間見知らぬお隣とハイタッチを交わした。

蜜月の時はいつしか過去になり、息子の思春期の多忙さに頻度は落ちていった。今回も私は1年ぶり、彼は実に5年ぶりだ。現地集合、デジタルのチケット、スタジアムの外周には様々なグルメが出店している。あの頃は山盛りポテトとコーラしかなかったね、と二人で笑った。隔世の感。こだわりカレーと地ビールと新しいエンブレムのタオルを手に指定席へと向かう。色々変わったんだな、と息子は何度も口にした。

キックオフ直前チームのチャントが流れる
You’ll never walk alone...
青と赤を掲げて歌うスタンド
息子も、私も…
どこかに連れていかれるような不思議な気持ち
試合が始まる

ビハインドの試合中盤、若手のアシストから百戦錬磨のサイドバックが同点弾のミドルを突きさす。勝負はこれから、さあ行くぞ。ここから羽ばたき、世界の数々のチームを渡り歩き、引退はここでと帰ってきてくれた彼は吠え、めいっぱいスタンドを煽った。

私の街は誰にとっても通過点、変化し続ける、そんな街だ。だけど、どんなに多忙でも、選手の顔ぶれが変わっても、ここに来たら俺たちの街TOKYOを掲げて誰もが歌う。ゴールの喜びを選手と分かち合う。その実感、それこそが私のHOME、私の自慢のHOMEだ。

スタンドのボルテージがぐわっと上がる。叩く手が痛い。ああ、ただいまだな、そしておかえり。隣の息子のつぶやきはそのまま私の心の声だった。