私の母の実家は海の近くにあった。

商店街から少し入ったところにある、洋館のような家。

夏休みの間はほとんど、その祖父母の家で過ごした。


朝食は近所のパン屋さんの食パンと目玉焼きにサラダ、お味噌汁。

牛乳はいつも瓶の牛乳だった。

祖父は4つに切った食パンを箸でつまんで食べる。

たまに海苔とチーズを挟んでいたりする。

これが私は不思議で不思議で仕方なくて、

いつもじーっと見てしまう。


祖父は行儀にうるさいので、あんまりじーっと見ていると、じろっと睨まれる。

わ、と思いながら黙々とパンを食べる。


ある日、祖父と二人で一緒にどこかに行った。

まだ4歳くらいだったと思う。

背の高いおしゃれな人で、足が悪いのでいつもステッキをついていた。


いつもは飲むことができないシュワシュワと泡が跳ねる甘い飲み物を、うれしそうに飲んだことは覚えている。


子供の頃の夏の日はいつまでも続く。

海に行ったり、仕掛け花火で遊んだり、従兄弟達と遊んだり。

おじいちゃまとも、少しお話しすることができるようになって。


ある日、近くの神社で獅子舞をしているのを見た。


カンカラカン

カンカラコンコン

カンカラコンカン


軽快な祭囃子。

「神社でお祭りの音が聞こえたよ、夏祭りは終わったのに。」

すると、「秋祭りの練習だよ」と教えられた。

秋祭りか。もう帰っちゃってるな。

夏も終わるんだ。

秋祭り、見れないんだ。

お家に帰るのか・・・。


カンカラカン

カンカラコンコン


今も夏の終わりになるとあのお囃子を思い出す。


あの日初めて、

季節が過ぎていくのが寂しいなと思った。

あの夏の日。