界面物性化学|Biointerface Chemistryでは,<生体とバイオマテリアル(人工物)><バイオマテリアルと医薬品・医療機器><医薬品・医療機器と生体>など様々な界面を研究対象としています。
高分子化学,コロイド界面科学に立脚してバイオインターフェースを創製し,その界面でダイナミックに変化しながら生起する生体反応や細胞応答を解明することで,新時代の医薬品や医療機器の創出につながる学術的知見の発見・解明,およびそれらの成果に基づいた工学技術の創造・創製を通じて分子操作技術として一般化し,新時代の医薬品,医療機器など社会的価値の創出を目指しています。
これまでに様々な材料がバイオマテリアルとして利用されてきました。しかしながら,生体分子の吸着および変性に端を発する細胞反応の制御には至っていません。その理由はこれまでの研究ならびに開発が,既存の材料の転用のコンセプトに終始してきていたからであると考えます。我々は革新的なバイオマテリアルを創製することでこれまで見いだせていなかった生体反応・細胞反応を解明することにチャレンジしています。
特に分子設計により様々な機能や物性をインストールすることができるポリマーバイオマテリアルは新時代の創薬基盤材料の切り札です。ここではポリマーの化学構造を明確に規定したバイオマテリアルの創製に取り組んでいます。
近年のin silico創薬技術(AI創薬)やハイスループットスクリーニング技術の発展により低分子化合物はもとより,ペプチド,タンパク質,核酸医薬など医薬品有効成分の候補物質が数多く発見されてきています。これらの候補物質は極めて優れた生理活性を有しています。しかしながら,その多くは難溶性であったり,不安定で脆弱であることから,その後の開発が思うように進まない例があります。
これらの医薬品候補物質を安全にかつ効果的に利用するための製剤材料・製剤技術が求められています。ここでは生体親和性ポリマーを要素材料とした分子集合体による難溶性物質の可溶化や,マテリアル機能を活用した表面生体親和化,水溶性フィルム化,ナノ粒子化,ハイドロゲル化などの基盤技術に関する研究を展開しています。さらに投与経路や適用部位などを考慮した新たな医薬品投与技術についても研究しています。
生体細胞やその組織体の機能発現を調節する分子科学的・物理化学的パラメータの導出を目指しています。これらのパラメータを明らかにすることで、より精密に医薬品の生理活性を発現させることができると期待されます。特に近年の細胞工学分野の発展に伴い、生体細胞やそれらからなる組織体が動物実験代替として評価できるようになってきています。ここでは、ナノ粒子や会合体など製剤材料の非臨床的試験の方法を開発します。特に間質組織や細胞外マトリックス成分の深部や内部に効率的に医薬品を送達するためのパラメータの導出に注力しています。