口腔の二大疾患である“う蝕(虫歯)”や“歯周病”は歯を失うだけでなく、さまざまな全身疾患とも関連します。ヒトでは、歯周病による、糖尿病や心血管疾患、早産や誤嚥性肺炎などのリスクが高くなることが問題視されています。イヌやネコも高頻度に歯周病を発症しますし、動物園動物たちも高齢化が進み口腔疾患の増加が問題視されています。しかしながら、予防歯科や歯科診療に精通した獣医師は少なく、長年の経験を積み重ねた対症療法に頼るしかない状況です。
麻布大学は歯科大学ではありませんので、ヒトや動物の口腔健康科学(歯科学/口腔保健学/硬組織科学など)を学ぶ機会はあまり多くありません。我々は神奈川歯科大学と連携協力に関する包括協定も締結しており、「ヒト×動物×歯学」をキーワードに、“動物歯学”という新しい学域創設を見据えています。
研究テーマ
歯周病学/う蝕学(歯科の二大疾患)
(1) ヒトと動物の共生科学に基づく歯周病原性細菌/う蝕原性細菌の交差感染メカニズム
(2) 動物の歯周病/う蝕の罹患状況
歯と口腔の健康管理学
(1) 屠体給餌による歯石沈着と歯周病の予防効果
(2) 動物の歯石形成メカニズムとその予防法
(3) 動物の口腔疾患の罹患状況調査(口腔の健康状態と全身の健康状態の関係性) など
咬合学とスポーツ歯学
(1) スポーツ歯科学に基づく競走馬の運動パフォーマンスの向上
(2) 動物の正常咬合とその異常(不正咬合)
動物の硬組織病理学
(1) ウマの蹄癌や蹄葉炎
(2) カンガルー病
古生物学/動物考古学
(1) 恐竜の歯の植立状態と歯根膜組織の進化
(2) 遺跡(縄文時代/オホーツク文化)から出土した獣骨(頭蓋骨や歯)でヒトと動物の関わり合いを探る
歯科実験病理学
(1) 歯科矯正治療期間の短縮化
(2) 歯周病誘導性の早期低体重児出産の予防
(3) 薬物性歯肉増殖症の予防と緩和
(4) 関節リウマチ(顎関節と膝関節)の予防と緩和
(5) 口腔腫瘍の発育様式と脈管侵襲