天文学におけるデータ科学的方法

概要

これからの天文学・宇宙物理学分野では,データの量が爆発的に増え,まさにビッグデータとなっていくでしょう.この流れは今後さらに拡大していきます.一方で,計算機の進歩,そして機械学習や統計学といった応用数学の進歩によって,新しいデータ科学の手法が急速に発達しています.今後,良い成果をあげていくためにはデータ科学の方法を積極的に天文学・宇宙物理学分野に導入する必要があるでしょう.本研究会では関連分野からデータ科学を共通項として幅広く話題をあつめます.現在行われている取り組みをお互いに理解し,必要となる問題を洗い出し,今後の天文分野において必要となるデータ科学の手法に関して議論をすすめたいと考えています. 本研究会は 2015年, 2017年に続き,三回目の開催となります.

詳細

共催:統計数理研究所 統計的機械学習研究センター

JST CREST 「広域撮像探査観測のビッグデータ分析による統計計算宇宙物理学」

日時: 2019年5月27, 28, 29日

場所:統計数理研究所 (〒190-8562 東京都立川市 緑町10-3),

大会議室(2F, B201)

参加:参加費無料,こちらから参加の登録,講演の申し込みをお願いします.(登録情報は本研究会の連絡と主催機関への開催報告のみに使用します. )

世話人:池田思朗(統数研),竹内努(名古屋大学),植村誠(広島大学),本間希樹(国立天文台)

招待講演

27日14:45 - 15:45 上田 修功(NTT コミュニケーション科学基礎研究所,理研革新知能統合研究(AIP)センター)

機械学習による時間変動天体分類~LSSTメンバー主催によるコンペの報告~

28日11:00 - 12:00 白崎 正人(国立天文台)

銀河撮像観測を用いた観測的宇宙論と深層学習

28日13:00 - 14:00 日野 英逸(統計数理研究所)

ガウス過程回帰の基礎と計測への応用

28日16:30 - 17:30 秋山 和徳(NRAO Jansky Fellow, MIT Haystack Observatory)

Event Horizon Telescopeによるブラックホール撮像

ブラックホール、アインシュタインの一般相対性理論によって予言されたこの究極の天体の写真が撮ることができたら本当に文字通りの「黒い穴」と見えるのか、これは天文学者に限らず、一般の人も思う素朴な疑問でした。一般相対性理論が発見され、そしてブラックホールの最初の理論解が導かれてから100年余り、ついに人類は地球サイズのミリ波電波干渉計 Event Horizon Telescope (EHT)によってM87*のブラックホールの撮像に成功しました。EHTの観測の一連のプロセスには多様なデータ科学的手法が用いられていますが、その中でも日本が最も大きく貢献したのは観測データから天体画像を復元するイメージングのプロセスです。本講演ではこのイメージングのデータ科学的側面に焦点をあてます。電波干渉計イメージングの統計数理的な背景から出発し、世界中のニュースで取り上げられたあのブラックホールの画像がどのようなデータ科学の手法を用いて復元され、検証されたのかを紹介します。また復元された画像から物理学的・天文学的にはどのようなことがわかるのか、そして今後のEHTの将来展望についても述べたいと思います。

一般講演(プログラム)

但木 謙一(国立天文台) CNNとすばる望遠鏡のビックデータを用いた銀河の形態分類

森井 幹雄(統計数理研究所) Angular Resolution Boosterを用いたX線望遠鏡のイメージ再構成法

吉田 貴一(名古屋大学) ガウス過程を用いたダークマターの密度ゆらぎの再構築(ショートトーク)

成田 憲保(Astrobiology Center) 高精度多色撮像観測と統計解析の融合によるTESS時代のトランジット惑星探査(ショートトーク)

米丸 直之(熊本大学) ニューラルネットワークを用いたパルサー候補天体の選出

西澤 淳 (名古屋大学) 深層学習によるダークマター質量推定

竹内 努 (名古屋大学) Some Aspects of Galaxy Evolution from Machine Learning

家 正則 (国立天文台) 宇宙の渦度分布統計と銀河形成シナリオ

近藤 千紘 (名古屋大学) 混合ガウシアンモデルによるEMアルゴリズムを用いた、ノイズの推定(ショートトーク)

João Pedro Pedroso (Univ Porto) A Model for Scheduling High-Cadence Telescope Observations

赤堀 卓也(国立天文台) SKA時代のファラデートモグラフィーを用いた宇宙磁場研究

大森 清顕(名古屋大学 ) PCAを使用した衝突銀河の星形成史についての研究(ショートトーク)

Suchetha Cooray(名古屋大学) Data Reconstruction Methods in Astrophysics and Cosmology

仲田 資季(核融合科学研究所) 実験室-天体プラズマ連携研究プロジェクトSoLaBo-Xにおけるインフォマティクス/データ科学的手法の応用について

大間々 知輝(広島大学) オルンシュタイン・ウーレンベック過程を用いたジェット天体の多波長間タイムラグおよびタイムストレッチの推定

植村 誠(広島大学) 活動銀河核ジェットの時間変動とデータ科学的手法

酒向 重行(東京大学) 東京大学木曽観測所Tomo-e Gozenによる動画ビッグデータ天文学

谷口 暁星(名古屋大学) 次世代サブミリ波超広帯域分光観測における大気除去手法

戸上 陽平(名古屋大学) ALMAデータを用いたスパースモデリングによる銀河系外の活動銀河の超解像度イメージング(ショートトーク)

永井 洋(国立天文台) Ornstein-Uhlenbeck過程を用いたクエーサーのミリ波変動予測とアルマフラックス較正への応用

酒見 はる香(九州大学) ファラデートモグラフィーによるSS433ジェット先端領域の磁場構造解析

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