::: 日時 ::: 2025年9月22日(月)-23日(火)
::: 場所 ::: 千葉大学理学部1号館2階123教室
若干名への旅費の補助が可能です. 希望される方は, 二木 futzaki at faczulty.gs.chiba-u.jp (zを除く)までご連絡ください. 基本的には先着順ですが, 選定については世話人にご一任ください.
::: プログラム(暫定) :::
9月22日
13:00-14:30 森脇湧登① (理化学研究所)
共形場理論入門 (Introduction to Conformal field theory)
14:45-15:45 佐野岳人 (理化学研究所)
同変版 Khovanov ホモロジー理論の対称性について
16:00-17:30 軽部友裕① (Kavli IPMU)
Bridgeland安定性条件とHalpern-Leistner氏による非可換MMPの背景
9月23日
13:00-14:30 森脇湧登②
超対称共形場理論とミラー対称性 (On supersymmetric CFT and mirror symmetry)
14:45-15:45 鈴木英正 (千葉大学)
ユークリッド空間の余接束における擬正則円盤の特異摂動と勾配樹木
16:00-17:30 軽部友裕②
曲面の安定性条件とブローアップ曲面における非可換MMP
::: 講演概要(暫定) :::
::: 森脇湧登 :::
① 共形場理論入門 (Introduction to Conformal field theory)
物理において「経路積分」と呼ばれる関数空間上の確率測度は数学的に定義可能な場合もあれど一般にはどのように構成したらよいか分かっていない。カラビヤウ多様体を入力データとして定義される(べき)「経路積分(超対称シグマ模型)」からはミラー対称性などの様々な予想が導かれる。 本講演の前半部分では「経路積分」と同値であると期待される代数である「full頂点作用素代数」を導入し、現在数学的に確立されている両者の間の関係を arXiv:2410.02648 と M.S.Adamo氏と谷本溶氏との共同研究 arxiv:2407.18222 に基づき議論する。
② 超対称共形場理論とミラー対称性 (On supersymmetric CFT and mirror symmetry)
経路積分を直接構成するのが困難であっても対応する「full頂点作用素代数」が表現論的に構成できることはしばしばある。後半部分では「超対称シグマ模型」に対応すると期待されるfull頂点作用素代数から、物理で期待される通り、背景にあるカラビヤウ多様体(ここではアーベル多様体と特別なK3曲面)の楕円種数やホッジ数、(量子)コホモロジー環などが復元されることを見る(arxiv:2504.09919)。
::: 軽部友裕 :::
① Bridgeland安定性条件とHalpern-Leistner氏による非可換MMPの背景
② 曲面の安定性条件とブローアップ曲面における非可換MMP
Bridgeland安定性条件は、連接層のスロープ安定性の導来圏における類似物である。 多様体のample coneがその幾何的性質を反映するように、Bridgeland安定性条件の空間も多様体の性質を反映すると考えられる。 Halpern-Leistner氏によって提案された非可換極小モデルプログラム(NCMMP)は、導来圏における最小モデルプログラム(MMP)の類似であり、Bridgeland安定性条件の空間を用いて、導来圏を半直交分解によってより小さな成分に分割することを目指す。 本講演では初めに安定性条件を定義し、ミラー対称性の文脈での安定性条件の立ち位置などを解説する。その後NCMMPの背景を解説する。最終的に射影直線P^1を例にとって、NCMMPのゴールを提示する。 第2講演では、P^nやブローアップ曲面のNCMMPの研究を紹介する。その際に多様体上の安定性条件の構成法や、安定性条件の貼り合わせについて、解説する予定である。 本講演はHalpern-Leistner氏の”The noncommutative minimal model program ”Zuliani氏の”Semiorthogonal decompositions of projective spaces from small quantum cohomology”や発表者の結果(arXiv:2410.18446)に基づく。
::: 佐野岳人 :::
同変版 Khovanov ホモロジー理論の対称性について
Khovanov ホモロジーは Jones 多項式の圏化として構成された結び目のホモロジー理論であり、「同変版」と呼ばれるいくつかの変種の存在が知られている。これらの変種に対して成り立つ対称性とその TQFT 的解釈、および Rasmussen 不変量との関係について説明する。本講演は M. Khovanov 氏との共著論文 “Symmetries of equivariant Khovanov homology” ( https://arxiv.org/abs/2509.03785) に基づく。
::: 鈴木英正 :::
ユークリッド空間の余接束における擬正則円盤の特異摂動と勾配樹木
ホモロジー的ミラー対称性予想を議論する上で欠かせない深谷圏は,擬正則円盤の数え上げによって定義される高次の射の積構造(A∞-構造)をもつ.境界条件を満たす擬正則円盤を数え上げることは一般に困難である.一方で,深谷-Ohの結果から,リーマン多様体Mの余接束T*Mにおける擬正則円盤を数え上げることと,Mにおける勾配樹木を数え上げることは同値であることが明らかになっている.この同値性は,擬正則円盤を囲むラグランジュ切断が零切断に近づくとき,擬正則円盤の像が勾配樹木の像に収束することから導出された.しかし,擬正則円盤の像においてどのような領域が勾配曲線に収束するのかを,具体的に記述される擬正則円盤を用いて議論されていない.そこで,本講演ではMを1次元ユークリッド空間,擬正則円盤を単位円盤から多角形領域への正則写像であるSchwarz-Christoffel写像とし,局所的な擬正則円盤の級数表示と勾配曲線への変形について考察する.また,擬正則円盤が勾配樹木に収束することをある種の写像列の収束として定式化するには,単位円盤自体に勾配樹木を構成する樹木の情報を付加する必要がある.本講演では,擬正則円盤の像の変形から,その収束先と予想される勾配樹木を構成する樹木を導出し,その樹木の辺や頂点に対応する領域に単位円盤を分割する方法について紹介する.本講演はarXiv:2503.14080に基づく.
::: 世話人 :::