「科学的論理思考」という堅いタイトルのくせにかわいい造本。和風幾何学模様の装丁も、A5サイズで横開き、大きなイラストに工夫されたテキスト(字体や波線を多用)。これらが確実に理解するのを早めています(あるいは理解した気にさせてくれます)。
書影です。凝った造本が分かるように撮影しました。(左のかわいい手は孫の手で、撮影を助けてもらいました。右は私のごつい手で、撮影が孫です。)
途中にある赤いページは、「やりがちな誤った推論」の八つの類型の説明を見開きで記載している部分です。凝っていますね。それに、この部分の誤謬の類型を覚えておくことは、役立つときがあると思います。
後半の「データ科学推論」の部分は、統計のお勉強でした。その項目がインデックスになっていてわかりやすい作りになっています。内容は簡単だなあと思っていたら、最近話題のベイズ確率が・・・やはり統計は難しい。
これが本書の骨子。科学的論理思考は、❶帰納推論 ❷演繹推論 に ❸アブダクション。そして、 ❹データサイエンス推論。えっと・・・そうか四つしかないのか!
p20-21を転載します。四つの思考法がきれいにまとめられています。
近年進歩の著しいデータ科学に関しては、統計の説明までで、ビッグデータ解析やAI等の解説には至っていません。読者を相当選ぶので割愛されたのでしょう。きれいなサンプルデータを得て統計解析することが重んじられてきましたが、粗くても膨大なリアルワールドデータを集めて解析することが可能な分野が増えています。クラスター解析とか因子の解析とかなにやらパワフルな解析方法があるようで、それらを気楽に活用できるようになると思考方法もかわるのでしょうか。
「アブダクション」という単語を恥ずかしながら知りませんでした。でも、「現時点の情報から飛躍的な仮説を立てて実験的に検証すること」・・・それって、研究で超大事な基本。この単語や下の様な図があれば、後輩研究者にもっとうまく話ができたかも。
p94-94のアブダクションを説明している見開きページを転載します。
「新しい仮説を立てる。」「事実に合うか繰り返し検証する。」これは、研究だけでなく、日常生活においても、なにかを進歩させていくにはとても大事なことですね。この図を見ていると、それはたいへんな作業ではなく、楽しいことだなと感じます。
科学的論理思考のための推薦図書が12冊挙げられて紹介されています。この文章(書評)がすばらしい。書評を読んでいて、取り上げられているその本をすぐに読んでみたくなる・・・そういうのがよい書評だと思っていますが、今回二冊もAmazonですぐ購入してしまいました。#08と#10です。
その一つの「考える、書く、伝える」(講談社)の著者である中野 徹 先生が、Honzの中で本書を逆に取り上げて感想を書かれています( https://honz.jp/articles/-/52066 )。参考にしてください。私の紹介よりもっとうまく本書のよさが伝わると思います。
ちなみに、もう一冊は「日常で使いたい数学用語辞典」上原 博明(彩図社)です。こちらは読んでいる途中ですが、本当に日常生活で使いたくなります。