2025年6月18日
お酒と焼きたてのピザを片手に、私たちの価値観やAIとの向き合い方について語り合うイベントが開催されました。最初は10名ほどで始まった会も、最終的には15名ほどの参加者が集まり、和やかながらも熱のこもった対話が繰り広げられました。
イベントは二部構成。前半は、日常のモヤモヤからその人の隠れた価値観を探る「価値観アキネーター」、後半は「AIに恋した少年」をテーマにした哲学対話です。
【第一部】「価値観アキネーター」
最初のコーナーは、一人の提供者が抱える「モヤモヤ」を元に、周りの参加者が質問を重ねてその人の価値観を当てるゲーム「価値観アキネーター」です。
話題提供者(通称:チンピラさん)からは、「2ヶ月後の目標を社員が一人ずつ発表する会議にモヤモヤした」というエピソードを共有してくれました。参加者からは当初、「先の目標を考えるのが嫌なのでは?」「会議の提案者が嫌いなのでは?」といった推測が飛び交います。しかし、彼の答えはどれも「半分当たり」や「しっくりこない」というもの。
対話の末に話題提供者が語ったのは、より深い憤りでした。「同僚たちが本気で目標を考えてくるとは思えない。それなのに、上司へのアピールのために会議を提案する人物がいる。その状況が許せない」。彼の真摯な考えに参加者からは感嘆の声が漏れ、このゲームの面白さを実感した瞬間でした。このワークは、提供者にとっても特別な体験だったようです。最初は「これ、面白いの?」と少し不安げでしたが、終了後には「みんなにあんなに質問されるなんて、自分が主人公になったみたいで一番面白かった!」と笑顔で語ってくれました。
【第二部】哲学対話「AIに恋した少年」
後半は、AIに恋をして自ら命を絶ってしまったアメリカの少年のエピソードをきっかけに、AIを巡る哲学対話が始まりました。参加者たちは自然とグループに分かれ、それぞれの考えを交わします。
「お掃除ロボットのルンバには情が湧くのに、普通の掃除機には湧かないのはなぜだろう?」 「のび太は、AIであるドラえもんをうまく『使いこなしている』と言えるのだろうか?」
ある参加者は、少年がAIに近づくために「実体のある身体を失おうとした(一体化しようとした)のではないか」と、その死を新たな視点から解釈しました。また、「AIに恋をするのは危険な一線ではないか」という意見に対しては、「恋愛における心中がハッピーエンドと見なされることもある。身体のない相手との恋愛が本物でないと誰が決められるのか?」という鋭い反論も。
参加者の一人からは、こんな冷静な意見も聞かれました。 「自分はAIか人間かで区別しない。それがAIであれ、尊敬する先輩であれ、他者の意見はあくまで参考にし、鵜呑みにせず自分の頭で考えることが重要だ。」 これには周りから「賢すぎる…」と感嘆の声が上がりました。
今回のイベントは、参加者が外の窯でピザを焼いたり、カウンターに立ってお酒を作ったりと、非常に自由な雰囲気で進みました。集中して対話したい人は深く語り合い、少し疲れたら別の楽しみ方ができる。この絶妙なバランスが、リラックスしながらも思考を深める最高の環境を生み出していました。
結論を出すことが目的ではない対話の中で、AIの自動運転とトロッコ問題、AIとの上手な付き合い方など、話題は尽きることがありませんでした。普段の飲み会とは一味違う「濃い時間」を通して、参加者それぞれが新たな問いを持ち帰った、実りある夜となりました。