海外調査の記録: 2017.IX.30 –X.31: べトナム北部・中部高原
海外調査の記録: 2017.IX.30 –X.31: べトナム北部・中部高原
ベトナム科学技術院(VAST)傘下のベトナム生物資源生態学研究所(IEBR)への短期派遣留学という形で一か月間ベトナムに滞在したが、その滞在期間の大半はベトナム北部および中部高原における野外調査に充てた。そのため実質的にはほぼ野外調査旅行に近いものとなった。ハノイから近いメリン生物多様性ステーション、および中部高原・南部チュオンソン山脈系に位置する3つの自然保護区・国立公園を訪れた。
メリン生物多様性ステーション
ハノイ・ノイバイ国際空港に到着してすぐに、Lさんの案内で最初の調査地であるメリン生物多様性ステーションへ向かった。
メリン生物多様性ステーションはハノイ市内から約50kmほどのところにある、ベトナム科学技術院(VAST)によって1999年に設立された研究教育拠点である。隣接しているタムダオ国立公園のバッファーゾーンとして位置づけられている。
植木に営巣していたムネアカナガフシアリ Tetraponera rufonigra (Jerdon, 1851) 。
宿舎のすぐ目の前を行軍していたヒメサスライアリの一種 Aenictus paradentatus Jaitrong & Yamane, 2012。本属の中では大型で比較的よく見る種。
三階建ての建物の二階の一室に宿泊した。
ヨコヅナアリ(旧Pheidologeton属)の一種 Carebara sp.
食事はLさんや職員の方が作ってくれた。
ハノイ
10月3日の昼頃にメリンを後にした。その日の夜はLさんの実家に泊めていただき、豪華な夕飯もごちそうになった。その後3日間はハノイに滞在し、Lさんの職場でもあるVAST傘下のベトナム生物資源生態学研究所(IEBR)でのゼミに参加するなどしたが、他には特にすることがなく暇を持て余した。
中部高原への出発の前日になって、何に当たったのか不明だが腹を下してしまい、一時は脱水症状にもなりかけた。一人だったのでかなり焦ったが、なんとか翌日までにある程度持ち直すことができた。
揚げ春巻き、タケノコ料理など。
豚。
ごく少数の店舗しかないと思うが、ハノイにも日本のコンビニが進出している。
農村の風景。
ハノイで見た作業員の生活感が溢れる解体現場。2018年に訪れたときにはこの建物は綺麗さっぱりなくなっていた。
ハノイのスーパー。リュックサック等を預けずには入れない(万引き対策と思われる)など、セキュリティが厳しい。
裏路地はなんとなく写真を撮りたくなる。
バンメトート
9日の朝、Lさんとともに飛行機でダクラク省・バンメトート空港へ飛んだ。次の目的地であるナムカー自然保護区の事務所に挨拶に向かったが、ディレクターがちょうど不在とのことで、午後まで待つことになった。適当に時間を潰したあとで事務所を再度訪問した。ナムカーへはバスで向かった。
バンメトートの街。
昼食。
ナムカー自然保護区
13日の午前中までの4日間、保護区の林縁にある小さな拠点に滞在した。衛生環境は良くはなく電力は不安定で、飲み水以外の生活用水には井戸水を汲んで使用する必要があった。
道の片側にある山林一帯が保護区にあたる。
ヒメカブト Xylotrupes gideon (Linnaeus, 1767)。
飼われていた猫。
滞在した拠点。
すぐそばのダム湖には水上集落があった。よく見ると生簀があることや太陽光発電で電力を賄っていることがうかがえる。
夕食の準備。まずは鶏を〆るところから。
ここで得られたクビレハリアリの一種(日本の南西諸島で見られるクビレハリアリ Ooceraea biroiと同属)を後に新種Ooceraea quadridentata Yamada et al. 2018として記載した。種小名は4つの(quadri-)歯を持つ(-dentata)の意で、前伸腹節に左右2対の突起をもつ特徴からつけた。
ナムヌン自然保護区
13日の午後に隣のダクノン省にあるナムヌン自然保護区に向かって移動した。
滞在するステーションが町から遠いうえに車が通れるような道もないらしく、また食料を持っていく必要があるとのことで、こうなった。
バイクの後部に乗せてもらい、保護林の内部にあるステーションへ向かった。道中、鶏が落下するアクシデントが生じた。
大型のトゲアリ Polyrhachis bihamata (Drury, 1773)
樹上に鎮座していたヘリグロヒキガエル Duttaphrynus melanostictus (Schneider, 1799)
滞在した拠点。トイレが故障しており使えなかった。聞いたところ半年以上前に壊れてそのままだと言われ、困惑した。毎日森で用を足すことに。同行のLさんも帰りたいと言い始めた。
林内。いくつか面白いアリが得られた。
ここで得られた、Pheidole leloi Eguchi & Bui, 2016 (兵アリ)。主にスンダランドとフィリピンに分布するトゲオオズアリ種群(P. quadricuspis group)で知られている唯一のインドシナ産種で、おそらくベトナム中部高原の固有種と思われる。このような、近縁種がスンダランドに分布する中部高原の固有種と思われる例は他にもあり、生物地理学的に興味深い。インドシナに産するオオズアリ属において、前胸に明瞭なトゲのある種は本種とP. hainanensisしか知られていない。
マオウカレハカマキリ Parablepharis kuhlii de Hann, 1842 と思われる若虫。
調理場の火で暖をとる子猫。
バンメトート
18日に一旦バンメトートまで戻り、Aさんと合流した。Lさんとはここでお別れし、20日にブージアマップ国立公園へ向かって出発した。
調査地では飲み物はぬるい水しか飲んでいない反動で、町にいるときは毎食のようにコーラを飲んでしまう。
屋台飯。
市場。
ベトナムでは熟していない青いマンゴーも好んで食べられるらしい。硬くて酸っぱい。
フオクロン~ブジアマップ国立公園
ブジアマップ国立公園の事務所を訪問時に調査許可書類に不足(国境付近のため、外国人の滞在には国境警備隊からの許可が必要だった)があることが判明した。不運なことに金曜日であったため、近くのフオクロンの街まで引き返し、二日間そこに滞在し月曜になってから必要な手続きを行ったうえで出直した。そのため当初予定していた期間(5日)よりも短い期間(3日)しか調査できなかった。 ブジアマップでは写真を撮るのを忘れていた。
屋台でチェー(だと思う)を二日で3杯は食べた。さすがに腹を下すかと思ったが平気だった。
ドリアンが入っていた記憶。
これは小豆が入っていた。
これは何が入っていたのかよく思い出せない。
焼きうどんのようなもの。
フォーと香草。
焼きそばのようなもの。
チャーハン。このあたりではコカコーラがなく、ペプシが多かった。
ホテルの上階からみたフオクロンの街並み
帰国後の顛末
帰国してから数日後に細菌感染症(症状的には腸チフスかレプトスピラだと言われたが確定診断が下りなかった)による高熱を発症し、2週間程度入院する事態になってしまった。ただ現地で発症しなかったのは不幸中の幸いであった。
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