Cross-boundary Cancer Studies
アジアでがんを生き延びる
秋冬学期 WEB授業 | 水曜1限
*2単位(再履修可)
*2単位(再履修可)
開講科目名:医学共通講義XXI
時間割コード:41311121
担当教員:
東京大学大学院医学系研究科衛生学分野
教授 石川 俊平
開講科目:地域文化研究特殊研究III
時間割コード:31M220-1350A | 31D220-1350A
担当教員:
東京大学東洋文化研究所
特任准教授 河原 ノリエ
はじめに
疾病構造が変容する中、アジアにおけるがんは急増している。がんという病には遺伝的素因や生活習慣を含めて、長い時間軸の中でのひとのくらしの営みや文化が大きな影響を及ぼしている。初回授業2011年4月8日「いのちの在り方をうつしだす鏡―アジアにおけるがん医療をめぐって」(赤座英之)から始まったこの連続講座に通底していることは、がんは単なる疾病ではなく、その病態の深刻さから社会への大きな負担となっており、ゲノムに組み込まれている生物学的な解釈にとどまることなく、社会のありようそのものを見定めなければ、この疾患と向き合うことができないという視点である。文理を問わず幅広い分野の学生の受講を期待するものである。
この講義シリーズは、固有性と多様性に富んだアジアで、医療・文化・経済・テクノロジーなど様々な要素が絡み合い未来に大きな影響をもたらす「がん」というアポリアに、多分野の専門知を統合することによって挑戦しようとするものである。高齢化社会を迎えるアジア地域においては、持続可能な社会の実現のためには、「誰一人取り残さないがん医療を目指す」ということが未来をつくるうえで重要であるが、今年度は、日本の地方のがん医療の課題をアジアとの比較の視点で深堀りしていく。これまで見過ごされたアジアとの共有課題が、日本の地方には存在しており、誰一人取り残さないがん医療の実現のためには、少子高齢化、人口減少のなかで医療DX/SXで持続可能な社会の在り方を考える叡智が求められる。
本講義は、2011年4月から続く全学横断型連携教育プログラムであり、がん研究者で構成される外部団体一般社団法人アジアがんフォーラムにより概念資源が提供され、UICC-AROの後援により運営されてきた。2021年度より、医学部の開講科目/Course 医学共通講義XXIと共催として開講されている。
授業計画
初回10/18に、イントロダクションののち、この授業の基盤となる学際研究についての講義をおこなう。そののち、昨年、富山県で開催されたローカルキャンサーデー2023の動画を4回にわけて視聴し、がん医療の地域における課題をリアルな多くの登壇者によって学ぶ。11/29の講義において、サイエンスとしての最先端のがん研究や、日本のがん医療の現状について学問的裏付けをもって深く学び、視座を確かなものにする。そのうえで、重層的にこの領域を捉えることができるいくつかの今日的課題をとりあげセッション形式で語りを重ねられれていくなかで、理解を深めていく。
講義スケジュール
【第一回】10/18
Close the Care Gap!
アジアと日本に学際研究がもたらす視点
園田 茂人
・東京大学東洋文化研究所教授
河原 ノリエ
・一般社団法人アジアがんフォーラム代表理事
・東京大学東洋文化研究所准教授
【第二回】10/25
がん国際連携がもたらす未来とは
河原 ノリエ
・一般社団法人アジアがんフォーラム代表理事
・東京大学東洋文化研究所特任准教授
ジェフ・ダン | Jeff Dunn
・UICC会長
ディナ・ミルアド | Dina Mired
・ヨルダン王女
・元UICC会長
唐金海
・南京医科大学副学長
・江蘇省人民病院書記長
・江蘇省対がん協会理事長
宇野 晶子
・株式会社資生堂常勤監査役
・北陸電力株式会社社外取締役
田島 和雄
・UICC⽇本委員会名誉会員
・国⽴⼤学法⼈三重⼤学客員教授
椙村 春彦
・公益財団法⼈佐々⽊研究所所⻑
・国⽴⼤学法⼈浜松医科⼤学教授
山野 愛子 ジェーン
・⼭野美容専⾨学校校⻑
サウンダリー サマスンダラム | Saunthari Somasundaram
・マレーシア対がん協会会長
李大寅
・株式会社New Tech 代表取締役社⻑
詹 雪莱
・覚悟草堂会⻑
園田 茂人
・東京⼤学東洋文化研究所教授
岩﨑 甫
・国⽴⼤学法⼈⼭梨⼤学副学⻑
・AMEDプログラムディレクター
坂野 哲平
・株式会社アルム 代表取締役社長
大割 慶一
・KPMGヘルスケアジャパン株式会社代表取締役
鷲見 学
・厚生労働省医政局地域医療計画課課長
野田 哲生
・UICC⽇本委員会委員⻑
・がん研究会がん研究所 所⻑
【第三回】11/1
地域社会とがん、地域のがんは誰が支えるのか
岩﨑 甫
・国⽴⼤学法⼈⼭梨⼤学副学⻑
・AMEDプログラムディレクター
中釜 ⻫
・国⽴がん研究センター理事⻑
品川 祐⼀郎
・トヨタモビリティ富⼭株式会社 代表取締役社⻑
・富⼭商⼯会議所副会頭
川合 声⼀
・⽇の出屋製菓産業株式会社 代表取締役会⻑
⼭崎 牧⼦
・経済産業省ヘルスケア産業課課⻑補佐
【第四回】11/8
がんを生き延びるためにはどんな地域が望ましいのか
⽥島 和雄
・UICC⽇本委員会名誉会員
・国⽴⼤学法⼈三重⼤学客員教授
垣添 忠⽣
・⽇本対がん協会会⻑
・国⽴がん研究センター名誉総⻑
沖⽥ 孝夫
・砺波庄川まちづくり協議会常任委員
坂井 彦就
・三楽園グループ 代表取締役社⻑
・庄川峡観光協同組合 理事⻑
宮窪 ⼤作
・砺波市庄川町東⼭⾒地区⾃治振興会会⻑
・東となみロータリークラブ会⻑
安⽥ 陽⼦
・上平⼩学校教頭
⽔林 慶⼦
・光教寺住職代務者
【第五回】11/15
がん医療を届けるためのアクセス改善の方策とは
野田 哲生
・UICC⽇本委員会委員⻑
・がん研究会がん研究所所⻑
坂野 哲平
・株式会社アルム 代表取締役社長
牧⽥ 和樹
・株式会社牧⽥組 代表取締役社長
・富⼭経済同友会 代表幹事
河原ノリエ
・アジアがんフォーラム 代表理事
・東京大学東洋文化研究所 特任准教授
鷲⾒ 学
・厚⽣労働省医政局地域医療計画課課長
森 雅志
・前富⼭市⻑
・⽇本政策投資銀行 特任顧問
⼤割 慶⼀
・KPMGヘルスケアジャパン株式会社代表取締役
【第六回】11/29
アジアのがんの生物学
石川 俊平
・東京大学大学院医学系研究科衛生学分野教授
【第七回】12/13
がんと向き合う
垣添 忠生
・公益財団法人 日本対がん協会 会⻑
【第八回】12/20
がん俳句・交差性(Intersectionality)とケア
堀田 季何
・(一般) 現代俳句協会理事・社会事業部長
・(一般) アジアがんフォーラム・アーティスティックディレクター
【第九回】1/17
アジアの人生100年時代の食を学ぶ
服部 幸應
・学校法人 服部学園 服部栄養専門学校 理事長・校長
【第十回】1/24
地域の繋がりが創り出す未来
稗方 和夫
・東京大学大学院新領域創成科学研究科人間環境学専攻 教授
柴田 祥宏
・庄川しばたクリニック 院長
【第十一回】
医療DX/SXでClose the Care Gap
河原 ノリエ
・一般社団法人アジアがんフォーラム代表理事
・東京大学東洋文化研究所特任准教授
西嶋 康浩
・厚生労働省 健康生活衛生局 がん・疾病対策課 課長
坂野 哲平
・一般社団法人アジアがんフォーラム理事
・株式会社アルム 代表取締役社長
⼤割 慶⼀
・一般社団法人アジアがんフォーラム理事
・KPMGヘルスケアジャパン株式会社代表取締役
授業の方法 | Teaching Methods
オンデマンド配信の講義の受講後、課題をITCLMSを通して提出
がんの現状とUniversal Health Coverage(UHC)の概念の意味を理解し、UHCがアジアのがんにもたらす意味を考察しながら、がんUHC実現を自分の専門分野に落とし込んで論じることができる(最終レポートの作成)
最終課題
アジアの中で課題先進国である日本の地方のがんUHCをあなたの専門分野の知見を活用して前進させるためのアイデアを自由に論じて下さい。
最終課題で満たすべき要件
・がんUHCを理解している
・アジアと日本のローカルのがんをめぐる課題を理解している
・論理に飛躍や矛盾がない
・自身の分野の知見をかけ合わせている
評価ポイント
・がんUHCを理解している
・参考文献や専攻分野の流れの中に位置付けられている
・学際研究としての発展性が見込める
・他分野の専門家にもわかりやすく正確に伝えることができている
・独創性がある
・現在のアカデミックな限界が明示されている
成績評価方法 | Grade Evaluation
1.出席として毎回授業後に提出する短いレポート (40%)
※内容は評定の対象ではない(講師からの質問への回答で、形式は自由)
2.最終発表・最終レポート (60%)
※アジアのがんの課題解決を自身の専門分野に引き付けて行う発表
(5分以内の発表動画とレポートの提出)
参考リンク | Reference
1. アジアでがんを生き延びる 東京大学出版会
http://www.utp.or.jp/book/b306518.html
2. Surviving Cancer in Asia: Cross-boundary Cancer Studies, The University of Tokyo, JJCO Volume 44, Issue suppl_1, February 2014
https://academic.oup.com/jjco/issue/44/suppl_1
3. Surviving Cancer in Asia: Cross-boundary Cancer Studies, The University of Tokyo, JJCO
Volume 51, Issue Supplement_1, May 2021
https://academic.oup.com/jjco/issue/51/Supplement_1
4. Teaching Global Asia : A Lecture Series to Understand Malaysian Case4
Surviving Cancer in Asia: Cross-boundary Cancer Studies, The University of Tokyo
https://gas.ioc.u-tokyo.ac.jp/outreach/booklet-gas-teaching-global-asia/
その他 | Others
◆ 履修上の注意/Notes on Taking the Course
再履修可能
◆ メールアドレス/e-mail address
noriekawahara@nifty.com
◆ 研究室電話番号/Laboratory room phone no
080-5039-7646
協力・後援
協力
(一社)アジアがんフォーラム
協力
(一社)アジア未来研究機構
後援
UICC- Asia Regional Office