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空閑と村上

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村上の自室で本棚をあさる空閑をとめようとする村上　「空閑…。あさるなってば。」　空閑がアルバムを取り出す　「あ。なんか重くて大きいのが出てきた。これなんだ？」　村上　「小さい頃の写真がたくさん入ってる本…。」　空閑　「ほほう。」

村上　「見る気か？」　空閑　「もちろん。」と言ってページをめくる。　「ふむふむ。小さい頃の村上先輩は可愛らしいですな。」　村上　「や、やめてくれ。」

何かに気が付く空閑　「でも、なんか、　村上先輩が家族と一緒に写ってる写真はたくさんあるけど、同じ年頃の人と写ってるのは、あんまりないんだな。」　村上　「ああ…。俺はサイドエフェクトのせいで周りとあんま馴染めなくて、独りだった俺を家族が支えてくれたんだ。」　空閑　「なんと。優しい家族だな。　村上先輩が優しいのもそのおかげなのか。」　少し言葉に詰まる村上　「俺は、優しくないよ。」

村上　「それより空閑のほうが大変だったろ。親父さん亡くしてから…。」　空閑　「俺には優秀なお目付役がいるからな。何も困らなかったぞ。」　村上　「そうなのか…。」　母親が入ってくる。「二人とも。もうすぐ夕飯だから来な。」　空閑　「どうもありがとうございます。」　母親　「おっ、いいの見てんじゃんコウが小さかった頃の動画もあるよ。見たい？」　空閑　「ほう、動画…。」　村上　「もういいから…。」

四人の食事が始まる。空閑　「とってもおいしいです。」　父親　「ありがとう。」　母親　「空閑くんしっかりしてていい子だね。周りから可愛がられてるでしょ？」　村上　「空閑は人懐こいからみんなから好かれてるよ。」　母親　「やっぱりねー。ねえ、空閑くん。向こうでコウがどんな感じか教えてくれない？」　空閑　「おっ。いいですよ。」　村上　「ちょっと、母さん…。」　空閑　「村上先輩はスズナリ第一のエースとしていつも先頭に立ち、剣の腕も折り紙付きで、ボーダー内の五本の指に入るほど…。戦いのときに村上先輩がいるととても心強いです。」　村上は照れて空閑を止めようとする。　母親　「そっかー。鋼は昔からなんでもできたからねー。」

父親　「でもコウが元気そうでよかった。」　母親　「そうだよ、なかなか連絡くれないんだもん。こないだの大規模侵攻のとき、本気で心配したんだよ。」　村上　「ごめん…。」　母親　「ほんとは私たちはボーダーなんぞに子供預けるの、賛成してないんだからね。二人とも、ボーダーのおっさんたちにイヤなこと押しつけられそうになったら、ちゃんとイヤって言うんだよ？」　空閑　「ご心配ありがとうございます。」　母親　「コウ、今は遠征がどうのこうのってゴタゴタしてるみたいだけど、それが落ち着いたら帰って来れるでしょ？」　空閑　「ふむ、村上先輩も帰っちゃうのか。」　母親　「そうそう、コウの将来を考えてね。ボーダーだっていつその役目が終わるかわからないし。」

母親　「ボーダー隊員って、大学や高校卒業したら本部で働いたり関連企業に勤めたりする人多いらしいけど、ボーダーに依存しない働き方のほうが長い目で見ると堅実でしょ。」　父親　「鋼がスカウトされてからなかなか家族そろって過ごせなかったしな。」　母親　「そう。だから早めに帰って来てね、コウ。」　村上が「うん。」と返事をする。空閑は村上が嘘をついていることに気がつく。

夜、空閑が窓から街を見下ろしている。　父親　「二人とも風呂入るか？」　村上　「空閑、風呂どうする？」　空閑　「あの山の上にあるの、なんだ？」　村上　「山？」　空閑　「あの光ってるとこ。」

父親　「展望広場のことかな。」　村上　「ああ、昔よくいったな。」　父親　「街を一望できるんだよ。天気がいいと遠くの山まで見えるんだ。」　空閑　「おお、すごいですな。行ってきていいか？」　村上　「道わからないだろ。暗いから俺も行くよ。」　父親　「遅くならないうちに帰っておいで。」　空閑　「了解です。」

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