展示について/木下理子
森山さんのおうちは、可愛くて明るくて、健康的なのに、どこか儚くてどうしようもなく切ない気持ちにさせられる場所だと思います。そんなところが惹かれる要因なのかもしれません。地下室に、本棚の陰に、みんなが忘れてしまったものをこっそり隠しているような。
人が同じ場所に長く留まって暮らすというのは、時間を、日々の垢として、物や建物に蓄積させているとも言えるのでしょうか。
建築家 西沢立衛さん設計の名建築として知られる森山邸。建築としての豊かさは勿論のこと、部屋の中は、ここに暮らす森山さんが集めた沢山の本やDVDの山があり、カラフルな小物のクセのある配置が隅々まで可愛らしく、いたずら好きでチャーミングな森山さんのお人柄がよく現れています。初めて足を踏み入れた瞬間から、体験したことのない喜びで胸がいっぱいになりました。2023年の4月のことです。
この日を境に、私の作品にまばゆい変化が現れました。
しばらく使っていなかった絵の具の箱をひっぱり出して、緑・赤・青・ピンクなど、思いついた色を衝動的に出来上がっていたアルミの作品に塗りました。「あの場所に似合う作品が作りたい」という想いが生まれていたのです。
今回の展示では、森山さんが普段生活しているA棟(えいとう)とお庭、外壁、屋上、レンタルスペースとして運用されているI棟(あいとう)全体を使った展示になります。
屋外展示は日が暮れると見えなくなってしまうため、明るい時間帯にご覧いただくことをお勧めします。
A棟では、予めお渡ししていたアートピースを森山さんに設置していただいたり(森山さんは天才インストーラーです!)、家具の下や天井まで、空間と対話しながら設置した作品を探していただくような展示になります。まだ見ぬ景色を発見していただけたら嬉しいです。
森山邸について詳しく知りたい方は、もりやまていあいとうのホームページに中村光恵さんが書かれた「森山邸という場所について」というテキストPDFが掲載されていますので、ぜひそちらをご覧いただけたらと思います。
このような機会をいただけたこと、この場所で展示ができることを心から感謝しています。
2024. 1/1