このたび、第72回日本衛生動物学会大会を東京都において、令和2年4月17日(金)~4月19日(日)の日程で開催させていただきます。
日本では戦後、経済成長とともに国民生活は大きく変化し、公衆衛生は大幅に改善しました。それに伴い、節足動物媒介性疾患や病害動物による被害は激減し、これらは遠い熱帯・亜熱帯のものという考えが長く続きました。しかし、2014年の東京・代々木でのデング熱アウトブレイクは忘却の彼方にあった節足動物感染症が、突然、現実味を持って身近にあることを国民に認識させました。また、ヒアリ等の新規な外来病害動物も既に国内に定着しているものと理解されるようになっています。このような新興感染症の発生・外来病害動物に対する被害に的確に対応していくためには専門家の存在が不可欠です。しかしながら昨今、大学・研究所における衛生動物学を専門とする教室・分野は前述の国民生活の変化とともに減り、過去の規模と比べると数分の一になっているのが、現状です。このような状況を踏まえると学会の果たす役割は極めて大きいと考えられます。つまり、学会は専門家がお互いの知見に関して緊密に情報交換する場として機能し、正確な情報を国民へと発信する媒体として機能していかなければなりません。さらに学会は大学院生・若い研究者の交流・育成の場として従来以上に重要性が増しており、将来の予期せぬ感染症・被害に備えるために人材を途切れることなく育成していかなければなりません。このような観点から本学会の社会的・学術的意義は過去にも増して高まっていると考えます。
本学会大会のプログラムについては一般演題の他、二つのシンポジウムを企画しています。一つは「ポストNGSの衛生動物学」シンポジウムです。これは本学会に所属する若手研究者を中心とした企画であり、本学会の新たな学問の潮流をご紹介いただきます。シンポジストとして岩見真吾先生(九州大学)、堀江真行先生(京都大学)、糸川健太郎先生(国立感染症研究所)、小林大介先生(国立感染症研究所)にご講演をいただきます。また、もう一つは「デング熱対策」に関するシンポジウムです。リオ五輪でのジカ熱の問題は記憶に新しいところです。2020年7月には東京五輪を控えており、このタイミングでアウトブレイクを起こしたデング熱に対する正しい情報を国民に向けて発信することは重要なことだと考えております。シンポジストは沢辺京子先生(国立感染症研究所)、津田良夫先生(国立感染症研究所)、忽那賢志先生(国立国際医療研究センター)にお願いしています。
本学会大会に参加される皆さまが有意義な3日間をお過ごし頂けるよう、私たち大会事務局一同、精一杯努力してまいる所存です。学会員の皆さまの積極的な参加をお待ち申し上げております。
令和元年8月
第72回日本衛生動物学会大会長 岩永史朗
(東京医科歯科大学・国際環境寄生虫病学 教授)