山田耕平(新潟大学 D2)
題目:タイヒミュラー空間の射影的埋め込み
要旨:タイヒミュラー空間は,いくつかの長さ関数によりユークリッド空間へ埋め込めることが古くから知られている.その最小の次元は,Schmutzによりタイヒミュラー空間の実次元+1であることが知られている.そこで,「いくつかの長さ関数により,タイヒミュラー空間の実次元と同じ次元の実射影空間へ埋め込むことができるか?」という問題を考える.このことについて.先行研究と現在考えることについて説明する.
山崎恵大(東北大学 D2)
題目:直径関数の位相的Morse性とBolza曲面
要旨:直径関数とは,種数$g\ge2$のTeichmüller空間上で定義される,各点に対応する標識付き双曲曲面の直径を与える関数である.定義自体は明快だが,これまでその性質はほとんど明らかになっていなかった.2026年6月に公開されたIrmer–Sahaのプレプリントでは,直径関数が位相的Morse関数であることが示された.本講演では,同論文で導入された $n$-podおよびdiameter graphと呼ばれる対象を紹介し,直径関数の位相的Morse性の証明を概説する.また,現在取り組んでいる直径関数とBolza曲面に関する話題にも触れたい.
田中雷人(早稲田大学 M2)
題目:平面多角形の配置空間とMorse理論
要旨:平面内において各辺の長さを固定した n 角形全体を考え、平行移動と回転によって移り合う配置を同一視すると、多角形の配置空間が得られる。辺長が適切な非退化条件を満たすとき、この配置空間は多様体となる。本講演では、まず (n-1) 本の辺からなる開いた鎖の空間を考え、その端点の位置を値に持つ endpoint map を導入する。次に、この写像の臨界点が直線配置に限られることを示し、臨界点における Hessian を具体的に計算することによって、endpoint map が Morse 関数となることを説明する。さらに、その Morse 指数から平面多角形の配置空間の連結性が辺長の不等式によって判定できることを紹介する。本講演の内容は、Beat Jaggi の “Configuration Spaces of Planar Polygons”(1992) および Don Shimamoto–Catherine Vanderwaart の “Spaces of Polygons in the Plane and Morse Theory”(2005) に基づく。
熊谷駿(八戸工業大学)
題目:The Klein-Lie W-curve and self-affinity of curves in Möbius geometry
要旨:The Klein–Lie W-curve is the family of curves invariant under the action of a one-parameter subgroup of a Lie group. Through the study of symmetry in the log-aesthetic curve (LAC), the W-curve in affine geometry was rediscovered. Furthermore, we have observed that these curves are unified by the property that a specific projective curve associated with the original curve forms a W-curve in Möbius geometry. In this talk, we introduce these results together with the underlying framework for geometric shape generation due to Inoguchi et al. This is joint work with Prof. Kenji Kajiwara (IMI, Kyushu University).
下雅意茉夢(九州大学 D1)
題目:Boundary limits of the Bergman invariants on generalized decoupled domains
要旨:$L^2$正則関数のなすヒルベルト空間の再生核であるベルグマン核の境界挙動は, 複素解析や複素幾何において非常に重要な研究対象である. 領域の境界の幾何情報からこの挙動を特徴付けるために, これまで局所評価や漸近展開, 境界極限などが調べられてきたが, 弱擬凸領域においては未だ統一的な結果が得られていない. 本講演では, 有限型関数と指数的平坦関数が混在したgeneralized decoupled domainsに対し, 非接曲線に沿ったベルグマン核(とその他のベルグマン不変量)の境界極限に関する結果を紹介する. また, スケーリング法や$L^2$評価式を用いた証明の流れについても解説する.
大岩亮太(九州大学 M2)
題目:Stein多様体の3つの一般化について
要旨:本発表では,Stein多様体の3つの一般化について話し,各概念の性質と関係性を論じる.一つ目はRothsteinが導入しAndreottiとGrauertが発展させた,滑らかな関数のLevi形式における固有値の正値条件を緩めた「q-complete」の概念である.二つ目はBarletとSilvaによる「q-Stein」で,射影空間への正則写像と直線束の正則切断,および計量の引き戻しを用いて正則凸包を一般化するものである.三つ目はBasenerによる,特定の微分方程式を満たす「q-正則関数」の凸包を用いる一般化である.発表では特に後者二つの具体例と性質を紹介し,これら3つの概念の関係性を説明する.
坂井健人(東京大学)
題目:Extremal length and its limit formula
要旨:極値的長さ(extremal length)は、もともと等角不変量として導入され、擬等角写像論においても用いられてきた歴史ある概念である。現在では、Teichmüller 空間の幾何を捉える上で、極めて重要な役割を果たしている。本講演では、極値的長さがもつTeichmüller幾何的な側面を概観する。さらに、Kerckhoff、宮地、Walsh らの研究を通じて確立された極値的長さの極限公式を紹介し、そのある種の一般化について述べる。
松田凌(立命館大学)
題目:Extremal length v.s. Hyperbolic length
要旨:Maskitは, 任意のRiemann面とその上の本質的単純閉測地線に対して, そのExtremal length とHyperbolic length の比較を行っている. この結果を, Riemann面のトポロジーの情報, つまり種数とpunctureに依存する定数を導入することで, Maskitの評価を改良した結果について議論したい.
板橋良馬(東北大学 M2)
題目:マンデルブロ集合と外射線
要旨:マンデルブロ集合の境界付近はカオス的性質を持つため、通常の浮動小数点演算では外射線の構造を正確に捉えることが困難です。本発表では、等高線との直交性を利用したニュートン法と、mpmathによる小数300桁の任意精度演算を組み合わせた高精度な外射線描画プログラムを構築しました。このアルゴリズムを活用して外射線の着地点を詳細に観察した結果について報告します。
Komitau Pierre (東北大学 D2)
題目:離散等角写像問題とハーディ空間
要旨:与えられた領域間の等角写像(リーマン写像)を求める問題(等角写像問題)は応用上重要だが、解くことが難しい問題として知られている。離散幾何学と複素解析の交点に位置する離散正則関数は、デジタルデータを扱う離散的な等角写像問題を解くための理想的な枠組みの一つである。本発表では、離散正則関数の基本的性質を紹介し、ハーディ空間の離散的対応物を定義して、その空間から導かれるSzegö射影に基づく交互射影アルゴリズムを用いた計算手法について述べる。
美野陽(東北大学 D2)
題目:単位円板上の単葉自己写像の中心化と連続半群
要旨:複素平面内の単位円板上での正則自己写像の合成に関する半群で, 非負実数 t をパラメータにもち, t=0 のとき単位円板上の恒等写像となるような族を考える. これが成す連続半群の各要素は単葉函数であることがわかっている. この事実から視点を逆転させると, 与えられた単葉函数がどのような条件のもとで連続半群に埋め込めるかという問題が生じる. 2023年にContreras, Diaz-Madrigal, Gumenyukは単葉自己写像と可換な自己写像全体, すなわちその中心化を調べることにより, この問題にアプローチする研究を開始した. 本講演では, 単葉自己写像の中心化に関する先行研究の結果に触れ, それらに関連するいくつかの結果を紹介する.
小森洋平(早稲田大学)
題目:Riemannの微分不可能な関数の紹介
要旨:Riemannは1860年頃に、連続だが至るところで微分できない関数の例としてFourier正弦級数で表される関数R(x)を提示した。その後50年ほど経ってHardyがパイの無理数倍を含む点においてR(x)が微分不可能であることを示した。つまりRiemannの予想が正しい状況証拠を与えた。更にその後50年ほど経ってGerverによってパイの有理数p/q倍(ここでpとqは奇数)でR(x)は微分可能であることが示された。つまりRiemannの予想は正しくなかった。Gerverの論文から数年後の1981年にSeiichi Itatsuは4ページの短い論文でGerverの結果の別証明を与えた。証明の鍵となるのは、Poissonの和公式(テータ関数のモジュラー変換公式)とGauss和という、当時Riemannが知っていたであろう概念のみである点が興味深い。今回の講演ではItatsuの短い論文を紹介し、時間があればRiemannの関数R(x)に関する最近の話題についても触れたい。
宮崎泰一(九州大学 M1)
題目:有理型写像による近似定理
要旨:岡多様体はRungeの近似定理を公理化することで定められる複素多様体であり, Stein多様体からの非定値正則写像を多く持つことから, 正則写像の自然な値域と考えられる対象である. この岡多様体の例を豊富に与えるのが, Gromovによる楕円性を有する複素多様体であり, 複素等質多様体はその最たる例である. 本講演では, 近年得られたStein多様体から代数楕円的多様体への正則写像の有理型写像による近似について述べる. これは, Rungeの近似定理が有理関数による近似として成立することに対応しており, その多様体値版と考えられる. なお, 本講演は九州大学の日下部佑太氏との共同研究に基づく.
髙倉真和(東京都立大学 D2)
題目:ファイバー束のStein性について
要旨:本講演では、コンパクト Kähler 多様体上の正則ファイバー束の Stein 性について論じる。ファイバー束に付随する Bott–Chern コホモロジー類が Kähler 類であることと、全空間が Stein 多様体であることが同値なことを説明する。
Alsharari Zain (東北大学 D3)
題目:Asymptotic Perimeter Estimates for Spirallike Functions
要旨:By a result of F. R. Keogh in 1959, the ratio L(r,f)/M(r,f) satisfies an upper bound involving log[(1+r)/(1−r)] for a starlike function f on the unit disk, where L(r,f) denotes the length of the image of the circle ∣z∣=r, and M(r,f) denotes the maximum of ∣f∣ on that circle. E. Crane and D. Markose showed in 2005 that the constant 4 in Keogh’s estimate is best possible. D. K. Thomas obtained in 1968 a related estimate for L(r,f)/sqrt(A(r,f)), where A(r,f) is the area of the image of the disk ∣z∣<r. In this talk, we extend these results to λ-spirallike functions for −π/2<λ<π/2.
レズニック大貴(早稲田大学 M1)
題目:モジュラー群の極限集合の分類と実数の連分数展開による分類との対応
要旨:F. Dal'Bo and A. N. Starkov (2000) の結果をもとに、双曲平面に作用するFuchs群の極限集合の分類について概観する。特に、モジュラー群 PSL(2,Z) に対して、極限点の分類を紹介し、その分類が連分数展開による実数の分類とどのように対応するかを解説する。
西宮琉輝(静岡大学 M2)
題目:Fatou-Bieberbach領域と吸引鉢
要旨:n次元複素空間と双正則になるような真部分領域,Fatou-Bieberbach領域について解説する.1次元のときはこのような領域は存在しないが,2次元以上では状況が異なる.今回はForstneričの“Stein Manifolds and Holomorphic Mappings”に基づき,吸引鉢を用いてその存在性を証明する.
廣瀬響唄(京都大学 M1)
題目:正則写像の局所線形化問題について
要旨:リーマン面上の正則写像が固定点の周りで線型写像と共役同値になるかという問題がある。この問題は100年以上前から様々な数学者によって議論され、今日ではある程度解決されている。ここでは現在までに得られている結果について概説する。
市川卓(東北大学 M2)
題目:単峰写像族の分岐とファイゲンバウム定数
要旨:本発表では、単峰写像族における周期倍分岐とファイゲンバウム定数について考察する。 周期倍分岐とはパラメータの変化に伴い、周期 1, 2, 4, 8, · · · のように周期が倍化していく現象である。このとき、連続する分岐点の間隔の比は一定値 4.669 · · · に収束することが知られており、この極限値をファイゲンバウム定数と呼ぶ。今回は実関数の二次写像を例として、パラメータの変化に伴う周期倍分岐を臨界点 0 の軌道図を用いて観察し、分岐点の間隔の比が 4.669 · · · に収束することを数値的に確認する。さらに、正弦写像などの他の単峰写像族についても同様の数値実験を行い、ファイゲンバウム定数が現れる現象について考察する。
内本諒(九州大学 M2)
題目:正規アフィントーリック多様体への正則写像の近似・拡張問題
要旨:Lärkäng—Lárusson は正規とは限らないアフィントーリック多様体への正則写像の近似・拡張問題について研究を行った。本講演では正規性を仮定した場合、より強い形で近似・拡張問題が解けることを紹介する。
丸井京香(東北大学 M2)
題目:Asymptotic multiplier ideal sheaves for abundant line bundles
要旨:For a big line bundle L, it is known that the multiplier ideal sheaf defined by its minimal singular metric coincides with the asymptotic multiplier ideal sheaf associated to L. In this talk, as a generalization of this, I will show that the same result holds for abundant line bundles. Furthermore, I will explain the definition of the asymptotic multiplier ideal sheaf associated to triples, along with some previously known results.