One Welfare国際研究センター
清水 隆
この度、第53回日本マイコプラズマ学会学術集会を開催するにあたり、一言ご挨拶申し上げます。
我々を取り巻くマイコプラズマ研究の現状は、今まさに大きな転換期にあります。新型コロナウイルス感染症のパンデミック下において、マイコプラズマ感染症の報告数は一時的に沈静化を見せていました。しかし、2024年から2025年にかけては一転して猛威を振るい、全国で記録的な感染者数を出したことは記憶に新しく、改めてこの病原体の公衆衛生上の重要性が浮き彫りとなりました。また、産業動物の領域においても、マイコプラズマによる経済的損失は依然として甚大であり、その根本的な解決には至っていません。人獣両域における課題解決は、我々に課せられた喫緊の使命といえます。
学会組織としても、大きな節目を迎えています。これまで本学会および世界の研究領域を強力に牽引してこられた先生方が相次いで引退の時期を迎えられています。特に、長年にわたり国内外で精力的に活動し、本学会の発展に多大なる貢献をされた大阪公立大学の宮田真先生が退官を迎えられたことは、一つの時代の区切りを象徴しています。まさに今、本学会には「世代交代」の波が押し寄せています。
そこで本大会では、「これまでの10年を総括して、これからの10年を考える」をメインテーマに掲げました。
特別企画のシンポジウムでは、学会を支えてこられた大御所の先生方にご登壇いただき、これまでの10年でどのような課題をいかに解決してきたのか、そして次の10年にどのようなビジョンを託すべきかを論じていただきます。一方で、プログラム委員会はメンバーを大幅に刷新し、次世代を担う若手研究者を中心に構成いたしました。彼らの瑞々しい感性によるプログラム検討を通じ、学会に新たな風を吹き込みたいと考えています。
さらに、周辺学術領域との積極的な交流を目指し、学会外から著名なゲストスピーカーをお招きした講演も企画しております。今回は獣医学部が主催することから、山口大学の髙野愛教授による「獣医学における細菌学」に関する基調講演も用意いたしました。ワンヘルスの視点から、マイコプラズマ研究の新たな地平を切り拓く機会となれば幸いです。
本学会の舞台となる山口市は、ニューヨーク・タイムズ紙の「2024年に行くべき52カ所」に選出され、世界中から注目を集めています。「西の京」とも称される美しい景観と歴史、そして豊かな自然は、皆様の活発な議論の合間の心休まるひとときとなることでしょう。
先達が築き上げた知見を尊びつつ、若手の情熱を融合させ、これからの10年を展望する。この歴史的な転換点となる本集会に、多くの皆様のご参加を心よりお待ち申し上げております。