特別講演
特別講演
MICSに魅せられて
地方独立行政法人佐世保市総合医療センター 心臓血管外科診療科長
松隈 誠司
心臓手術の分野においても近年低侵襲化が進み、特に弁膜症手術においてはMinimally Invasive Cardiac Surgery(MICS)が広く普及してきたと思われる。出血が少なく輸血も少ない、術後回復は早く社会復帰が早い、胸骨を切らないため術後荷重制限がない、傷も小さく患者さんは喜ぶ。MICSを行いだすと心臓外科医はMICSの魅力に憑りつかれる。ただ良いことばかりに見えるMICSも一つ間違えると低侵襲とは程遠いものとなる。現在比較的安全に施行されているMICSも開始早期の頃は様々な問題点があった。その問題点の中でも人工心肺確立による合併症は重篤なものが多い。特に逆行性送血による脳梗塞や送血カニューラによる下肢虚血は常に考えておかなければならない合併症の一つであり、各施設それに対する対応策は様々と思われる。当院では体格を考慮し可能な範囲で小口径カニューラを選択し、それでも大腿動脈径に見合わなければ上腕動脈送血を追加することでさらにカニューラサイズを下げることを第一選択としている。また下行大動脈や腹部大動脈の血管内性状が軽度不良な場合は積極的に上腕動脈送血を併用し大腿動脈送血カニューラを細くしている。これまでMICSで脳梗塞や下肢虚血を起こした症例はなく有効な方法と思う。
最近MICSは冠動脈バイパス術(CABG)でも行われ始めた。MICS CABGは数名の先駆者により開始され、近年医療技術、医療器具の進歩により普及する兆しが見えており、また数年後の保険適応を見据え、MICS CABG導入を検討している施設も多いと思われる。当院でも令和6年9月よりMICS CABGを導入し1年半経過したが23例にMICS CABGを施行した。成績は問題ないが手術時間的には正中切開と比較すると悠に1時間は長くかかる印象である。CABG適応となる症例のほとんどが3枝病変以上であるが3枝バイパスからMICS CABGを導入していくのは厳しいと思われた。
3年間で87例と少ない経験ではあるがこれまでの当院でのMICS手術の現状と展望をお伝えしたい。