教育講演
教育講演
心臓手術における止血戦略-POCモニタリングを中心に―
地方独立行政法人佐世保市総合医療センター 麻酔科診療科長
前川 拓治
心臓手術における止血異常は、患者自身の予後の悪化を招くだけでなく、手術時間の延長や再手術など手術室のスタッフに対する負担も大きくなる。
本講演では、心臓手術における凝固管理の最適化を目的として、近年注目されているポイントオブケア(POC)モニタリングを活用した止血戦略について概説する。体外循環を伴う心臓手術では、希釈性凝固障害、血小板機能低下、線溶亢進など複合的な止血異常が生じるため、従来の標準検査のみでは迅速かつ的確な評価が困難である。そこで、トロンボエラストメトリー(ROTEM)やトロンボエラストグラフィー(TEG)といったPOC機器を用いることで、凝固過程をリアルタイムに可視化し、個々の患者に応じた輸血および止血介入が可能となる。本講演では、これらの原理と解釈、実際のアルゴリズムに基づく治療介入、ならびに臨床アウトカムへの影響について、自験例および最新の知見を交えて紹介する。さらに、抗線溶療法やフィブリノゲン補充の適正使用についても触れ、エビデンスに基づく包括的な止血管理戦略を提示する。POCモニタリングを中心とした周術期管理の重要性と今後の展望について議論したい。