4K対応テレビとは

2018年12月実用放送開始

12月29日のNHKニュースで「4Kテレビ出荷が大幅増 全体の3割に」と報じていた.ニュース概要は以下に示すとおりである.

ことし国内向けに出荷されたテレビは,現在主流のハイビジョンより画質が鮮やかな4Kに対応した製品が大幅に増えて全体の3割を占め,低迷が続くテレビ市場のけん引役となるか注目されている.電子情報技術産業協会によると,ことし国内向けに出荷されたテレビは,先月末までの合計でおよそ374万7000台.これは去年の同じ時期を8.8%下回っていて,1年間で見ても3年連続の減少となる公算が大きくなっている.ただ,今のハイビジョンより画質が鮮やかな4Kに対応したテレビはおよそ126万7000台と,27.5%増加して全体に占める割合が初めて3割を超え,存在感が高まっている.

国内のテレビの出荷台数は,地上波放送の完全デジタル化を前に買い替え需要が高まった平成22年の2519万台をピークに,その後低迷が続いてきた.このため国内のメーカー各社は台数よりも比較的価格の高い製品を販売する戦略で,4Kテレビやことし各社が本格的に参入した有機ELテレビに力を入れていて.来年以降どこまで盛り返すのか注目される.以下省略

2018年12月に4K・8Kの実用放送が開始されるとはいえ,「現在一般家庭で使用しているハイビジョン機を4Kテレビに変更する必要はないのでは」と思っていたので,ニュースを見て少々違和感を感じた.そこで地上デジタル放送や衛星放送の4K対応テレビの現状を調べてみた.家電メーカーや大手通販店の記事は中立性に欠けるので,地デジ移行の際に役に立った「総務省の広報」を参考にした.

以下,総務省広報の動画のコマを使って,自学用にまとめてみたので紹介したい(詳細は参考資料の動画を見てほしい).


画素数

ハイビジョンテレビで「フルHD」と呼ばれるのは,横×縦の画素数が1920×1080で,4Kが登場した時点で2Kと呼ばれるようになった.次図に示すように,4Kは2Kの4倍.8Kは16倍の画素数を有し,ハイビジョンより画質が鮮やかであるといわれている.現在市販されているパソコン用ディスプレイの解像度は2Kである(例 私が使用しているディスプレイ,BenQ G2420HD の解像度は 1920 x 1080 @ 60 Hzである).4Kテレビは,日頃眺めているパソコンディスプレイがドット間隔はそのままで縦横2倍になったと思えばよい.ハイビジョンテレビ画面とPCディスプレイのドットの密度を比較すると一目瞭然である.

アンテナ(左旋円偏波用)

人工衛星などの通信では,衛星が回転し偏波面の固定ができないため,円偏波による通信が用いられている.右旋回と左旋回のマイクロ波は一つのアンテナから同時に発信できるとともに, 受信アンテナにより分離可能である. 現在売られている4Kテレビは4Kに対応した製品というだけで,4K放送を受信するにはアンテナを交換し,外付けチューナーを設置する必要がある.その理由は,4Kでは現在の右旋円偏波に加えて左旋円偏波を使用するためである.注)右旋,左旋はベクトルとして考えると分かりやすい(参考記事).



現在使用されている右旋電波 現在の機器で対応可能





4Kで新たに使用される左旋電波 新たな周辺装置を追加する必要がある

総務省の広報に掲載されている周波数配置は以下の図のとおりである.上が右旋,下が左旋である.左旋と右旋は同じ周波数ではあるが,位相が異なるため,4K/8K試験放送対応の次世代型BSアンテナで区別して受信することができる.

現在一般的に売られているBS・CSアンテナは,右旋円偏波専用であり,左旋円偏波は受信できない.左旋円偏波も使用する4K,8Kの放送を見るには,家庭のアンテナを左旋受信可能なアンテナに交換する必要がある.

周辺装置

アンテナから4K対応チューナーに至る伝送路も見直す必要がある.アンテナで受信した信号を同軸ケーブルで伝送する際,混信をさけるため,左旋の方は右旋より高い周波数を用いるため,現在使用している周辺装置より高い周波数に対応できる分配器や壁面端子類が必要である.

衛星放送用の受信設備の機器構成

左旋電波はアンテナで受信した後従来の信号より高い周波数帯域に変換されるため,それらの信号を伝送できない分配器や壁面端子などは交換が必要


ケーブルテレビの場合は,4K対応STB(セットトップボックス)の追加契約が必要であり,それなりのレンタル料が必要である.2018年末の実用放送後の対応の詳細は不明.

買い換えるメリットはあるか

現在主流の地上デジタル放送の映像コンテンツは2Kであるので,4Kテレビで見ても意味がないと思いがちだが,いろいろ資料を見るとそうではないらしい.

その理由は,4Kテレビにはアップスケーリングという解像度変換機能が採用されていて,2K映像も画面いっぱいに拡大して映し出すことができるようになっているという.低解像度の映像を引き伸ばすと映像の質が落ちるのが普通であるが,4K対応テレビには2Kの映像を4K相当の高解像度映像に変換する画像補間技術が搭載されている.そのため,2Kコンテンツをハイビジョンテレビで見るよりも,高精細の画質に見えるという.

4Kテレビの性能を引き出すための高解像の映像コンテンツは放送だけでなく,DVDやブルーレイ,インターネット配信動画などでも対応してきているので,これからテレビを買い換える際は4Kテレビを購入すべきかもしれない.なお,8Kテレビの特性を発揮させるためには100型程度の大画面が必要であり,かなり高価格な商品になることが予想され,当面家庭での存在価値は低いと思われる.

参考資料

BS等4K・8K放送に関する紹介動画の公開(総務省)

総務省では、平成30年12月から実用放送が開始される衛星基幹放送による超高精細度テレビジョン放送(BS等4K・8K放送)について、わかりやすく紹介した動画を制作しました。

平成30年12月から実用放送が開始される衛星基幹放送による超高精細度テレビジョン放送(以下「BS等4K・8K放送」という。)に関する周知・広報の一環として、BS等4K・8K放送の魅力や、試聴に必要な機器、留意点等をわかりやすく紹介した動画を制作し、Youtubeの総務省チャンネルに公開いたしましたので、お知らせいたします。

○動画のURL

(1)BS・110度CSによる4K・8K放送のご紹介

https://youtu.be/VtIzNo5Hhmg

(2)BS・110度CSによる4K・8K放送を視聴するために

https://youtu.be/_wnv1Btcbrg

(3)BS・110度CSによる4K・8K放送を適切に受信するために

https://youtu.be/5jlD5Z_AcvY

総務省では、今後とも、BS等4K・8K放送に関する情報や、視聴方法等の周知啓発について、関係団体と連携・協力して進めてまいります。