大会長挨拶


日本核医学技術学会第28回東北地方会総会学術大会 岩手大会 大会長


佐々木敏秋

 

第28回日本核医学技術学会東北地方会は20231014日(土)に岩手県盛岡市の駅前の岩手県民情報交流センター通称aiinaで開催されます.今大会のテーマは「受け継いだ技術の利用、研究、応用そして次世代への継承」です。

日頃私達が感じることは、技術は無くなると立ち上げるのに大変な労力を必要とすることです。例えばファントム実験、MET BTファントムに液体を封入するとき、針が容易に入っていきません。しかし、針をまっすぐ立てて回転させると容易に球へ入れることができます。これで2秒実験が早まり、イライラ解消です。もう一つの例として、平泉の金色堂をあげます。当時の住職、今東光さんは文化庁に掛け合い、瓦一つ一つばらして、構造を確認しながら、金色堂を修復するべきだと強く主張とされました。残して伝えることの大切さを知っていたのでしょう。分解して構造が分かれば後の修復にも役立ちます。おかげであの煌びやかな金色堂を拝見できます。技術の継承は大切です。話は変わりますがクジラはなぜ海に戻って鰓ではなく肺呼吸したのでしょうか?これは魚類は爬虫類を経て肺を獲得しましたが、それまでの鰓は耳小骨になりました。そのため海に戻っても鰓となった耳小骨は使えず、肺呼吸のままなのです。つまり失った遺伝子も元に戻りません。私は職歴の中でPET施設の改修と移転を経験しました。期間が開き、同じ実験をするのですがすんなりとは進みませんでした。金色堂のように900年もたてばなおさらです。本大会の講演はPET技術的検討分科会特別講演1では公益社団法人 日本アイソトープ協会、品証・安全管理室、新藤元司先生にサイクロトロン、PET施設の廃棄についてその経緯、法律的な観点現実的、技術的な苦労話をお願いしております。自己遮蔽ではないサイクロトロンの廃棄の苦悩が伝わると思います。続いて、私共は放射線、放射能というものに仕事柄係わっております。しかし、Emc2から511KeVを導く計算式が思い浮かぶでしょうか?昨今エネルギーの問題があります。放射線はそれ自体が高エネルギーであります。そんな中、小型次世代原発が始まろうとしております。原子力発電、再処理、核融合等の新世代日本のエネルギー技術に関して企画委員会特別講演2に海外電力調査会 調査第一部 上席研究員 黒田 雄二先生に依頼しました。放射線に係わるものとしてここに知識を得て、人間としても、放射線技師としてもその知識と技量の幅を広げと欲しいと思いで企画しました。理事長講演は、学会本部の状況、核医学と我々にかかわる現況と近未来の姿、現在の核医学技師に求められるもの、国際的な観点を含め会場にいらした皆様がこの会場に来てよかったと思うに違いない聴きごたえのある内容です。質問があれば非常に知識が豊富で親しみやすい理事長なので、講演終わった後でで何でも答えてくれます。最後にこの盛岡という開催地について、義経の時代、また、平泉藤原4代以前には安倍一族がおりました。前九年の役の後、俘囚長の弟、安倍宗任が四国、九州に流されました。昨年、残念ながらご逝去された安倍晋三元首相はその子孫です。先に紹介した今東光住職曰く「安倍一族はもったいない。」と記してあります。大政治家は受け継がれるのです。現在はいかにわかりやすく伝えるか、また見せるかに重きが置かれます。学会のプレゼン、論文がいい例です。それも大切なのですが、先のファントムのように2秒実験を短縮させる技術、形に出ない技術の継承も大切です。そのため「受け継いだ技術の利用、研究、応用そして次世代への継承」と唱えました。皆様の活発な議論、討論をお願いします。