明治維新(1853年のペリー来航~1877年西南戦争)によって出発した日本の近代社会は、文明開化、殖産興業、富国強兵、大正デモクラシー、軍国主義、戦後復興、高度経済成長期を迎え、現在の日本の基盤を築いてきた。21世紀になり、これまでの輝かしいと思われてきた近代社会の栄光は崩壊しつつある。例えば、世界のGDPに占める日本の割合の推移をみると、1995年には17.6%まで高まった後、2010年には8.5%になり、2040年には3.8%まで低下すると予測されている。社会基盤の基本である教育制度の基礎となった、1872(明治5年)年の学制発布により、文部省は小学校の設置に注力したが、150年が経過した今日において地方都市のみならず大都市においても消滅の危機にあっている。
人口減少・高齢化、災害大国の日本において、果たして創造的な21世紀文明社会を構築することができるのであろうか。今こそ、問題解決型アプローチの理念と具体的展開が求められるであろう。
生態系・社会文化系での生産活動を重要な生産手段として理解し、発展させる活動、生産とは生活活動であるという認識立つ考え方。その有効性を合理主義として新たに理解する。つまり、科学主義的合理性から、生活経済的合理性、環境生態的合理性、社会文化的合理性、市民参画合理性等々、新しい合理性の概念が求められる。21世紀社会では人類が共存していくための新しい合理性や科学性の確立が求められている。それらの上に、21世紀型の科学技術が発展するだろう。
経済活動は人類が発生した時から現在まで人間の生存(個体保存)と存続(種の保存)のための行為である。その基本は持続可能な社会・文化・生活環境の形成と維持にある。人間活動が地球レベルの政治、経済、生態環境に影響を与える21世紀社会ではその持続可能な活動や形態の在り方が求められる。つまり、20世紀社会を牽引した極端な自由主義や個人主義(リベラリアン)を克服し、人権と共存の社会文化を形成しなければならない。
その基本として新しい経済思想が求められている。それはすでにある公共・環境・文化・生活経済の考え方を展開した経済性の確立とその活動となる。
国家の概念は歴史と共に変化してきた。近代国家と呼ばれるものが20世紀社会の国家モデルである。政治形態では国民国家、生産様式では工業化、生活様式では都市化が近代国家の典型的な形態である。20世紀の歴史では多くの多様な近代国家が生まれ、それらの国家はその構成者・国民とその帰属意識(愛国心)によって支えられてきた。21世紀社会を支える科学技術や経済活動によって、「グローバリゼーション」というこれまでの国民国家を超えた文化、経済、政治環境が生み出された。今、それによって近代国家主義の根幹が揺らぎ、国家主義を基調とする国際化によって混乱が生み出されている。これらの課題を考える時、20世紀型近代国家主義的共同体概念を検討し、そして21世紀型の国際共存を全体にした国家共同体概念を検討する必要がある。そのために、21世紀型社会を運営するための政治社会思想、政策、それらを実現するための科学技術や政治社会学・政策学が問われている。
科学主義とそれに支えられた社会経済・科学技術政策が20世紀型社会や文化(科学技術文明社会)を形成した。それらの社会経済の発展によって豊かな社会・先進国と呼ばれる社会が人類の歴史に登場した。民主主義・人権思想はその豊かさを背景にして形成された社会思想である。21世紀型社会で発展しつつある科学技術文化では、その進歩の方向が問われている。つまり、巨大な生産性と生産力をもたらす科学技術の所有とその管理を巡る課題が、この社会運営の重大な問題となっている。それは、単に科学技術の応用(誰がそれを管理し運営するか)という問題だけではない。それが誰の為にあり、どのように貢献寄与するかとう課題となる。このことは政治社会学の重要な課題となる。21世紀社会が巨大な科学技術インフラや制度によって展開する限り、この社会が持続可能であるための科学技術と社会文化の在り方(制度設計)を求めることが政治社会学(総合政策学)の課題となる。
このような問題意識の中で、この度「21世紀文明社会研究会」を組織化する段階を迎えており、改めて本研究会へのご参画のご案内と多面的なご指導・ご鞭撻をお願いしたく、ご関心をお持ちの各位は是非ともご参加・ご参画の程、お願いする次第である。
21世紀文明社会研究会 発起人
元政治社会学会理事長 三石博行
立命館大学名誉教授 仲上健一
㈱メディエコ研究開発 槇 和男
マテリアルライフ学会常任理事 五十嵐敏郎
21世紀文明社会研究会にご関心を持ち研究会にご参加いただける方は、下記へメールを頂ければ幸いです。
E-mail:nakagami[@]sps.ritsumei.ac.jp
※メール送信時は、@の前後の[]を外してください。
お知らせ
本研究会の発起人の一人である三石博行先生が、2026年8月17日にご逝去されました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
21世紀文明社会研究会 発起人 三石博行先生を偲んで
2026年8月
21世紀文明社会研究会
発起人 仲上 健一
21世紀文明社会研究会の発起人の一人であり、本研究会の創設と発展に大きく貢献された三石博行先生が、2026年8月17日にご逝去されました。ここに研究会を代表して、謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈り申し上げます。
三石先生は、政治・社会をめぐる幅広い研究と思索を基礎として、現代文明が直面する諸課題を個別の問題として捉えるのではなく、科学技術、経済、環境・生態、社会・文化、政治、市民社会などを相互に関連する一つの文明システムとして捉えることの重要性を、長年にわたり提起されてきました。
21世紀文明社会研究会は、こうした問題意識を共有する研究者・実務家が集まり、21世紀にふさわしい新たな文明社会のあり方を構想する場として発足しました。三石先生はその発起人として、本研究会が単なる学術研究の場にとどまることなく、社会が直面する現実の課題に向き合い、異なる専門分野や世代を超えて議論する「知の交流の場」となることを強く期待されていました。
20世紀は、科学技術の飛躍的な発展と経済成長によって、人類に大きな豊かさをもたらしました。しかしその一方で、地球環境問題、資源・エネルギー問題、格差の拡大、地域社会の変容、戦争と紛争など、多くの課題を21世紀へと持ち越しました。さらに今日では、気候変動、人口減少・高齢化、感染症、人工知能をはじめとする急速な技術革新、地政学的緊張などが相互に関連し、私たちはこれまで経験したことのない複雑な時代を迎えています。
こうした時代であるからこそ、三石先生が研究会の創設に際して問いかけられた「21世紀において、私たちはいかなる文明社会を構築すべきなのか」という根源的な問いは、ますます重要になっているように思います。
三石先生が重視されたのは、経済的な効率性や科学技術の進歩だけを社会発展の尺度とするのではなく、人間の生活、環境・生態系、社会・文化、そして市民の主体的な参加を含めた多元的な価値から社会を考えることでした。そこには、科学技術や経済を否定するのではなく、それらを人間社会と自然環境との調和の中に改めて位置づけ、より持続可能で人間性豊かな文明を創造していこうとする強い意志がありました。
研究会での三石先生は、常に大きな視野から議論を見守りながら、時には問題の本質を突く問いを投げかけ、私たちに改めて考える契機を与えてくださいました。専門分野の枠を越えて自由に議論すること、既成の考え方を当然のものとして受け入れないこと、そして未来社会を構想するためには長期的な歴史認識と文明論的視点が必要であることを、先生との議論を通じて多く学ばせていただきました。
三石先生のご逝去は、21世紀文明社会研究会にとって誠に大きな喪失です。しかし、先生が私たちに残された問題意識と「21世紀文明社会」を構想しようとする志は、これからも研究会の活動の中に生き続けていくものと確信しています。
私たちは、三石先生が提起された問いを改めて受け止め、科学技術と人間、経済と環境、国家と市民、地域と世界、そして現在世代と将来世代との関係を問い続けながら、21世紀にふさわしい文明社会の姿を探究していかなければなりません。それこそが、先生の志を受け継ぐ私たちに課せられた責務であると考えます。
三石先生とともに研究会を立ち上げ、議論を重ねることができたことは、私にとってもかけがえのない経験であり、大きな財産です。これまで賜りましたご指導とご厚誼に、改めて深い感謝を申し上げます。
三石博行先生の長年にわたる学問と社会へのご貢献に深甚なる敬意を表するとともに、先生の志が次の世代へと受け継がれていくことを願い、心よりご冥福をお祈り申し上げます。
プロジェクトについて、詳しくは世話人の仲上健一へ電子メールnakagami[@]sps.ritsumei.ac.jp でお問い合わせください。
※メール送信時は、@の前後の[]を外してください。