「私、パートのおばちゃんなんですよ。なのに、なんかめっちゃ色々やっちゃうんです(笑) 」
そう言ってチャーミングに笑うのは、山口市八坂(やさか)地域づくり協議会で事務局員を務める村田裕子さん。
一見すると、周りを巻き込むパワフルなスーパーウーマン。でも、村田さんが地域のワークショップを動かせるようになった背景には、「できないからこその強み」と、それをドンと受け止める地域の器(地域運営組織)の存在がありました。
地域でワークショップを企画した時のこと。 村田さんは、アドバイザーの先生に当然のように進行(ファシリテーター)を頼むつもりでした。しかし、返ってきたのは「自分で進行やってみたら?」という予想外の一言。
「『えっ』って思ったけど、『あ、やろう!やらんといけんな』って。先生もいてくれるし、まあ、どうにかなるじゃろっていう、いつもの感じで開き直りました(笑)。
自分をよく見せようとか、自分ができるなんてこれっぽっちも思っていなくて。できないからこそ、みんなに頼って一緒にやっていく。私の言葉が足らないところも、周りの人が『こういうことが言いたいのよね』って理解して助けてくれるんです。
賢い人が賢いことをやるんじゃなくて、できない人がやっている。だから下手でもいいじゃん、って。シーンとした硬い雰囲気の会議は本当に嫌いなので、みんなの記憶に『今日も村田、バカやったね』って、ひとつでも面白く残ればいいなと思ってやっています」
もちろん、いつも大成功ばかりではありません。 時には、参加者から想定と全く違う答えが返ってきて、「そこじゃないんだけどな……」と、終わったその日にドーンと落ち込むこともあるそうです。
でも、村田さんはそこで立ち止まりません。「じゃあどうしよう?」と、すぐに色んな人に聞いて回り、次の課題へと変えていきます。この「問いかけ、巻き込み続ける姿勢」こそが、八坂地域に対話の文化を育む種になっていきました。
ワークショップ当日、村田さんは地域のみなさんにこんな風に投げかけました。
「いきなり『八坂地域全体をこうしよう』じゃなくて、『自分たちの地区のことは、自分たちで決めてくれ』って伝えたんです。だって、八坂地域の中にある各地区が良くならないと、八坂全体が良くなるわけがないから。まずはそこから始めましょう、考えてくださいって。みなさん本当に、自分たちのこととして一生懸命考えてくれました」
このワークショップは、八坂地域に存在していた「地域づくり計画」「福祉計画」という2つの計画を1つに統合するという取り組みの一環として実施されました。 「地域は福祉がないとやっていけない、福祉も地域が考えないといけない」──。地域運営組織と地区社会福祉協議会が手を取り合い、誰もが安心して暮らせる、「地域の土壌」をみんなで耕すための大切な一歩でした。
パートの事務局員である村田さんが、ここまで泥臭く、そしてはつらつと挑戦を続けられるのはなぜなのか。そこには、村田さんが「理想のリーダー」と慕う、地域づくり協議会の役員たちの存在がありました。
「会長はね、私のやることに絶対に口を挟まないんです。『こうこうこうで、こういうことやりたい』って言うと、『いいよ。やることやりんさい』って任せてくれる。
その代わり、何かあった時にはドンと構えて守ってくれるんです。私のことで何か言われることも多分あったと思う。だけど、そこでストップしてくれて、『あんた気にせんでええよ』って。本当に甘えっぱなしです。だから、私はここにいられるんだと思います」
最後に、村田さんはこれから地域に関わる人たち、そして周りで支える立場の人たちへ向けて、こんなメッセージを語ってくれました。
「もしも事例紹介を聞きに来てくださる人が、頑張る人の周りにいて支える立場の人(役員や行政の方など)だったら、『やろうとしている人を守ってほしい』と伝えたいです。守ってもらえたら、人はやれる。私が今日までやってこられたのも、本当にみんなのおかげ。私だけでできたんじゃないんです」
「私、本当にできないんです(笑)!」と朗らかに謙遜していた村田さん。 ですが、インタビューを終えた事務局は密かに睨んでいます。「村田さん、本当は仕事ができる、優秀な事務員さんですよね…?」と。
だって、「自分の弱みをオープンにして、周りの強みを引き出す・巻き込む」って、実は一番高度で、一番大切なスキルです。 アドバイザーの先生が進行をムチャ振りしたのも、地域の会長たちが「やりんさい」と100%任せているのも、村田さんの「やりきる覚悟」と「巻き込み力」を誰よりも信頼しているからに違いありません。
「凄い人だからできる」のではなく、「できないから助けて!」と言い合える安心感・信頼関係(土壌)が地域にあるからこそ、新しい活動が次々と芽吹いていく。 分科会「土の部屋」では、そんな八坂地域の「土壌」のヒミツに触れていただきます。ぜひ村田さんに会いに来てください。