科学研究費基盤研究(S)

「集合行動の認知・神経・生態学的基盤の解明」

(平成28〜32年度:代表 亀田達也)

目的

局所的な社会現象が増幅し、社会全体に亘る予想外の影響を及ぼし得る「集合行動」のしくみについて理解することは、21世紀の諸科学が連携して取り組まねばならない重要課題です。本研究は、近年、生物学と情報科学で注目を集めている社会性昆虫の群れ行動に関する知見を参考に、社会科学研究者と、動物行動学・脳科学・数理生物学などの自然科学研究者が連携し、人間の集合行動を支える認知・神経・生態学的基盤について解明することを目指します。

本研究は、「計算論的アプローチ」と呼ばれるメタ理論に立ち、数理モデル、コンピュータ・シミュレーション、大規模種間比較実験(ヒトとほかの動物種の集合行動の比較)、神経・生理実験、認知・行動実験、大規模インターネット実験を組み合わせた、組織的な検討を行います。人間の集合行動のしくみを科学的方法により理解するとともに、集合行動の予測・制御についても応用的な示唆を得ることを目的とします。


メンバー

亀田達也(東京大学大学院人文社会系研究科) 代表

坂上雅道(玉川大学脳科学研究所)

伊澤栄一(慶應義塾大学文学部)

大槻 久(総合研究学院大学先導科学研究科)

竹澤正哲(北海道大学大学院文学研究科)

犬飼佳吾(大阪大学社会経済研究所)

小川昭利(順天堂大学医学部)

小倉有紀子(東京大学大学院人文社会系研究科・PD)

研究成果

2017年度

    1. 亀田達也 (2017). モラルの起源――実験社会科学からの問い.岩波書店.
    2. Xin, Q., Ogura, Y., & Matsushima, T. (2017). Four eyes match better than two: Sharing of precise patch-use time among socially foraging domestic chicks. Behavioural Processes. 140, 127–132. doi: 10.1016/j.beproc.2017.04.020
    3. Toyokawa, W., Saito, Y., & Kameda, T. (2017). Individual differences in learning behaviours in humans: Asocial exploration tendency does not predict reliance on social learning. Evolution and Human Behavior, 38, 325-333. doi: 10.1016/j.evolhumbehav.2016.11.001
    4. King, A. J., Kosfeld, M., Dall, S. R. X., Greiner, B., Kameda, T., Khalmetski, K., Leininger, W., Wedekind, C., & Winterhalder, B. (2017). Explorative strategies: Consequences for individual behavior, social structure, and design of institutions. In L-A. Giraldeau, P. Heeb and M. Kosfeld (Eds.), Investors and Exploiters in Ecology and Economics: Principles and Applications (pp. 205–214). Cambridge, MA: MIT Press.
    5. 小川昭利・横山諒一・亀田達也 (2017). 日本語版 ToM Localiser for fMRI の開発. 心理学研究. doi: 10.4992/jjpsy.88.16217
    6. Tindale, R. S., & Kameda, T. (2017). Group decision-making from an evolutionary/adaptationist perspective. Group Processes and Intergroup Relations. doi: 10.1177/1368430217708863
    7. 上島淳史・亀田達也 (2017). 資金獲得に伴う不確実性は他者のためのリスク選択に影響するか. 心理学研究. doi: 10.4992/jjpsy.88.16328
    8. Jayles, B., Kim, H., Escobedo, R., Cezerad, S., Blanchet, A., Kameda, T., Sire, C., & Theraulaz, G. (2017). How social information can improve estimation accuracy in human groups. Proceedings of the National Academy of Sciences. doi: 10.1073/pnas.1703695114


2016年度

    1. Murata, A., Saito, H., Schug, J., Ogawa, K., & Kameda, T. (2016). Spontaneous facial mimicry Is enhanced by the goal of inferring emotional states: Evidence for moderation of “automatic” mimicry by higher cognitive processes. PLOS ONE. 11(4): e0153128. doi:10.1371/journal.pone.0153128
    2. Bryant, G.A., Fessler, D.M., Fusaroli, R., Clint, E., Aarøe, L., Apicell, C.L., Petersen, M.B., Bickham, S.T., Bolyanatz, A., Chavez, B., De Smet, D., Díaz, C., Fančovičová, J., Fux, M., Giraldo-Perez, P., Hu, A., Kamble, S.V., Kameda, T., Li, N.P., Luberti, F.R., Prokop, P., Quintelier, K., Scelza, B.A., Shin, H.J., Soler, M., Stieger, S., Toyokawa, W., Evan den Hende, E. A., Viciana-Asensio, H., Yildizhan, S. E., Yong, J.C., Yuditha, T., & Zhou, Y. (2016). Detecting affiliation in co-laughter across 24 societies. Proceedings of the National Academy of Sciences, 113(17), 4682-4687.
    3. Kameda, T., Inukai, K., Higuchi, S., Ogawa, A., Kim, H., Matsuda, T., & Sakagami, M. (2016). Rawlsian maximin rule operates as a common cognitive anchor in distributive justice and risky decisions. Proceedings of the National Academy of Sciences, 113(42), 11817-11822. doi: 10.1073/pnas.1602641113.

メディア(新聞・雑誌など)

  • Kameda, T., Inukai, K., Higuchi, S., Ogawa, A., Kim, H., Matsuda, T., & Sakagami, M. (2016). Rawlsian maximin rule operates as a common cognitive anchor in distributive justice and risky decisions. Proceedings of the National Academy of Sciences, 113(42), 11817-11822. doi: 10.1073/pnas.1602641113. 【プレスリリース Link、朝日新聞2016年10月2日朝刊3面 Download、中日新聞2016年12月1日夕刊2面 Download、コメンタリー Link
  • 亀田達也 (2017). モラルの起源――実験社会科学からの問い.岩波書店.

書評一覧【毎日新聞「今週の本棚」2017年4月23日朝刊 Download、週刊東洋経済「新刊新書サミン グアップ」2017年4月15日 Download、朝日新聞「読書」2017年5月7日朝刊 Download、週刊エコノミスト「Book Review」2017年5月23日号 Download、山梨日日新聞「読んでナルホド」2017年5月21日朝刊 Download、日経サイエンス「森山和道の読書日記」2017年7月号 Download、北海道新聞「卓上四季」2017年5月24日朝刊、文藝春秋「今月買った本」2017年7月号 Download、教職ネットマガジン「今週の一冊」2017年6月26日 Download、東京新聞「東京エンタメ堂書店」2017年9月18日 Download 、Shorebird 進化心理学中心の書評など(2018年1月10日) Link、中央公論「新書大賞2018ー私が選んだこの5冊」2018年3月号 Download、ファイナンス「ファイナンスライブラリー」2018年3月号Download

シンポジウム、ワークショップ

  • 日本心理学会第81回大会(久留米大学)公募シンポジウム「集合行動のアルゴリズムを考える:計算論的な種間比較の可能性」(2017年9月20日)大会ページ
  • ワークショップ「集合知の認知・神経・生態学的基盤」 久留米ビジネスプラザ(2017年9月23日):

科学研究費基盤(S) ワークショップ「集合行動の認知・神経・生態学的基盤の解明」が、福岡県久留米市で開催されました。当日は、松島俊也教授(北海道大学)、大平英樹教授(名古屋大学)、豊川航博士(University of St. Andrews)の講演、大槻久講師(総合研究大学院大学)、犬飼佳吾講師(大阪大学)の指定討論に加え、17名の若手研究者によるポスター発表など、8時間にわたる熱心な研究討議が行われました。当日のプログラム・発表要旨はこちらで見ることができます(プログラム(PDF)当日の写真)。なお、このWSに先立ち、日本心理学会第81回大会初日の9月21日に、シンポジウム「集合行動のアルゴリズムを考える:計算論的な種間比較の可能性」が、久留米シティプラザ・グランドホールで開催されました。多くの聴衆を集め盛況でした。シンポジウムの概要はこちらで見ることができます(PDF)。

セミナー、講演

  • 松島俊也教授(北海道大学理学研究院)のセミナー(「動物にとって理(ことわり)とは何か?」)が開催されました(2017年7月3日)。詳しくはこちらをご覧ください。
  • 亀田達也教授(東京大学大学院)が第18回「脳と心のメカニズム」ワークショップで招待講演を行いました(2018年1月10日)。詳しくはこちらをご覧ください。
  • 亀田達也教授(東京大学大学院)が第22回進化経済学会で招待講演を行いました(2018年3月30日)。詳しくはこちらをご覧ください。

受賞

  • 亀田達也(著)『モラルの起源ー実験社会科学からの問い』(岩波新書)が2017年日本社会心理学会出版賞を受賞しました(2017年10月28日)。
  • 齋藤美松さん(博士2年)が、第10回人間行動進化学会・若手発表賞を受賞しました(齋藤美松・亀田達也「Warm heart, but Cool head (II)」、2017年12月10日) 。詳しくはこちらをご覧ください。
  • 金ヘリンさん(博士3年)が北海道大学大塚賞を受賞しました(2018年3月20日)。