オサムシ科昆虫の狩り・下唇鬚と小顎髭の働きについて
高校2年生 T. K.
高校2年生 T. K.
こちらは2022年度筑駒文化祭「廻天」の、
筑駒中高生物部公式ホームページです。
クロケブカゴミムシ Peronomerus nigrinus の頭部
下唇髭・小顎髭は昆虫の頭部の器官の一つであり、いくつかの節に分かれていて、短い触角のような見た目をしている。一般的に、触角は匂いを感じるとされるのに対し、下唇髭・小顎髭は味を感じるとされる。*1 人でいう鼻と舌の関係に近い。下唇髭・小顎髭の機能について調べてもあまり明確な解説は見つけられなかったが、後述するようにゴミムシは餌を下唇髭・小顎髭で直接触っていたので納得できた。
捕食中に餌のサカマキガイに小顎髭で触れるヨツボシゴミムシ Panagaeus japonicus
ゴミムシの多くは夜行性で、肉食である。また一部活発に飛ぶ種もあるが、基本的にはあまり飛ばず、地面を歩き回って餌を探す。(英語ではground beetleとも呼ばれる)よく昆虫は匂いを頼りにして狩りを行う、といったことが言われる。確かに匂いは餌の手がかりとなる。だが少なくともゴミムシが匂いだけを狩りに用いているとは私には考えにくい。主に夜間に狩りをするゴミムシにとって匂いを頼りに餌に近づくことはできても、最終的に匂いだけで餌にたどり着くのは厳しいと考えた。(つまり、匂いから方向・位置を考えるのには限界があると思った。)そこで、匂いを頼りに餌に近づいたうえで下唇髭・小顎髭により直接ものを触ることにより餌か判断しているのではないかと思った。こう聞くとゴミムシが餌にたどり着くのが難しそうに聞こえるが、ゴミムシは非常に素早く、広い範囲を動けるので餌にたどり着けると考える。実際にゴミムシが地面を下唇髭・小顎髭で叩くようにしながら歩いたり、餌に触れたりする様子が見られる。
ノグチアオゴミムシ Lithochlaenius noguchii (写真左)を野外で20匹採取し五匹ずつ以下の四つのグループに分ける。
1 触角と下唇髭・小顎髭共に変化なし
2 触角のみ切除
3 下唇髭・小顎髭のみ切除
4 触角と下唇髭・小顎髭共に切除
そのうえで近距離で餌を与え、正常に捕食するか調べる。また二股に分かれた通路の片方に餌を置きどちらに行くか調べる。
警戒心が強く、また夜行性のため実験を行うのが難しく、現在その方法を模索中。
*1
NC STATE Agriculture and Sciences 「Mouthparts」 https://genent.cals.ncsu.edu/bug-bytes/mouthparts/ (2022/9/25閲覧)