近代社会の固定的な社会構造に代わる、多様性に対応した新たな仕組みが求められています。多様で複雑である個人を二元論的に単純構造化することによって、「女らしさ」「男らしさ」のような社会規範を生み、表面上は安定してみえる社会秩序が維持されてきました。一方で、私たちの生き方の選択肢を過剰に制限する装置として機能することで、不自由、不平等、差別が不当に正当化されてきた側面があります。
本講義では、社会の歴史的成り立ちに目を配りつつ、日常生活の中でジェンダーがどのようなかたちで内在化されてきたのかを明らかにします。そのうえで、現実だから「しかたがない」、わたしひとりでは「どうしようもない」、「あたりまえ」として見過ごしてきた常識のどこに問題が潜んでいるのか、あるべき社会の姿とはどのようなものなのかを考えます。
貧困は、人生における選択可能性の幅を大きく制約してしまいます。人類が大きな犠牲を払いつつ長期間かけて獲得してきた、自由や平等をも奪ってしまう、根絶すべきものです。とくに、子どもはその生活を家族に依存せざるを得ないことからも、個人に責任を負わせるのではなく、社会全体で取り組んでいくことが必要です。
本講義では、子どもの貧困と教育格差のメカニズムについて概観し、これらの問題が生じる社会構造について理解することを目的としています。世代を超えた貧困の連鎖を断ち切るために、私たちは何ができるのかを考察します。
「家族」とは何か、という単純な問いに対する答えは意外と難しいものです。時代、文化、地域によってその捉え方は大きく異なるとともに、個人差も存在します。この講義では、現代家族が直面している課題やその歴史的背景について体系的に学び、自らの経験を相対化し、批判的に読み解くことを期待しています。これからの「家族」のあり方や「家族」にかかわる政策や制度について、自分なりの展望を提示できるようになることを目指します。