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本研究室では,交通現象・交通行動やその発生の源である都市構造を科学的に捉え,安全・便利・快適で地域社会と調和のとれた交通システムやまちづくりのあり方とその実現方策を追及するための研究に取り組んでいます.
土地利用と交通の相互作用を考慮した
都市モデルによる分析のフレームワーク
人口減少・少子高齢化社会の下,地方都市では歳入減少により,現在と同程度の公共サービスを提供することが厳しくなることが懸念されており、都市サービスの将来需要予測に基づき,問題が顕在化するまでに適切な対応をとることが重要な課題となっています.
本研究では,土地利用と交通の相互作用を考慮した都市モデルを用いて将来時点の人口・世帯の分布を推計し,交通を含む都市サービス需要の変化を把握するための手法の開発を行っています.その上で,既成市街地への居住誘導施策,公共交通ネットワークの整備・再構築等,持続可能な都市構造の構築に向けた施策の評価,検討を行っています.
マイクロシミュレーション型都市モデルの構造
成熟期を迎えた我が国の都市では,少子高齢化に伴う人口構造の変化,ライフスタイルの多様化などを背景として,都市施策の方向性は量への対応から質への対応へと移行しています.これらに対する有効な分析手法として,個人,世帯,企業などを個々の単位で操作し,詳細な属性を考慮した世帯構造の変化,交通行動,政策の効果等を分析するマイクロシミュレーション型都市モデルが挙げられます.
本研究では,マイクロシミュレーション型都市モデルの実用化に向けた取り組みとして,シミュレーション初期時点のマイクロデータ作成,将来予測モデルの開発,詳細な属性に基づく施策評価手法の開発を行っています.また,確率的な試行の下でのシミュレーション結果の特性把握や,リスク分析への活用に関する研究を行っています.
東日本大震災や各地で発生した豪雨災害の経験を生かした,尊い命が失わなわれないための迅速な避難体制や,災害に強いまちづくりの構築が求められています.
本研究では,被災時の避難場所・施設への避難行動を,時間帯によって異なる避難対象者の分布予測や選択される避難交通手段の選択を考慮した交通シミュレーションにより分析し,避難交通の課題把握や対策の検討を行っています.また,世帯の居住地選択行動や住宅地価に災害リスクが与える影響を居住地選択モデルを用いて分析し,災害に強い都市構造の形成に向けた検討を行っています.
データ統合による潜在的危険地点の抽出
効果的かつ効率的な交通安全マネジメントを実施していくためには,交通事故危険性について科学的な解明を行うことが不可欠です.
本研究では,交通事故統計データに加えて,自動車プローブデータ,ドライブレコーダデータ,衝突警報データ,道路空間3次元データといった交通ビッグデータと,市民ヒヤリハット情報などを適切に組み合わせた道路交通安全マネジメント手法の構築を目指しています.具体的には,豊橋市,名古屋市をはじめとする愛知県内の市町村や,マレーシア・ペナンなどを対象として,道路交通実態の詳細把握,事故危険性統計モデルの構築,地点別・事故類型別の事故危険度の評価や要因分析,特定事故危険地点における詳細な交通流の調査・解析・シミュレーションモデルの構築,それらに基づく交通安全対策の立案・評価などを行っています.
小学生事故発生地点と通学路との空間関係
近年,日本の子どもの移動方法が世界から注目されています.日本ではほとんどの小学校で子どものみによる徒歩での登下校が行われており,登下校以外でも,低年齢の頃から子どものみによる自立した移動がなされています.その結果として健康の促進にも貢献している可能性も指摘されています.一方,他国では登下校は親の送迎やスクールバスが主であり,車に依存していることから子どもの肥満問題に繋がっている可能性や,親の送迎がピーク時間の渋滞を引き起こすといった問題も生じています.
本研究では,日本国内の各地域や,マレーシア,インドネシア,オーストラリアなどを対象に,子どもの移動方法について調査を行い,特に子どもの自立的な移動性 (Children Independent Mobility; CIM) や交通安全性・防犯性に着目した比較分析を通して,より良い子どもの移動のあり方を検討しています.
路面電車が通る豊橋駅前大通の交通シミュレーション
地方都市において、賑わいのある豊かな都市を形成するためには、過度に自家用車に依存しない人中心のまちづくりが重要であり、そのための的確な地域公共交通マネジメントが求められています。
本研究では、様々な調査や交通シミュレーション等を用いて、地域公共交通(地域鉄道、路面電車、路線バス、コミュニティバス、タクシーなど)を活用した人中心のまちづくりのあり方や実現方法を研究しています。