氏名:山田 晄世 さん(国際地域学科 国際地域専攻)
留学形態:交換留学
留学先:マレーシア国民大学(マレーシア)
留学期間:2024年10月~2025年7月
氏名:山田 晄世 さん(国際地域学科 国際地域専攻)
留学形態:交換留学
留学先:マレーシア国民大学(マレーシア)
留学期間:2024年10月~2025年7月
【マレーシアについて】
マレーシアは東南アジアにある国家で、首都はクアラルンプールです。面積は日本とほぼ同じの約33万平方キロメートルですが、人口は約3,350万人と日本の人口の3割程度です。また、日本との時差はマイナス1時間とそこまで大きな差はないですが、年平均気温は約27℃と一年を通して温暖な気候で、日本のような四季はないものの雨季と乾季が存在しています。日本とマレーシアを比較した際、大きな違いとして挙げられるのが「民族構成」と「宗教」です。
初めに民族構成についてですが、最も多いマレー系が約70%、それに続いて中華系が約23%、インド系が約7%となっています。多民族国家であることから様々な言語が使用されており、国語であるマレー語の他にも中国語、タミール語、英語(こちらはイギリスによる植民地支配の影響が大きい)が話されています。
次に宗教についてですが、マレーシアの連邦の宗教はイスラム教で、国民全体の64%が信仰しています。しかし、イスラム教以外にも仏教19%、キリスト教9%、ヒンドゥー教6%、その他2%の割合で信者がおり、イスラム教を国教に定めている他国と比較してもムスリム(イスラム教の信者)の割合が低くなっています。
【大学と周辺地域について】
私が通っている大学はマレーシア国民大学(Universiti Kebangsaan Malaysia/UKM)という国立大学で、クアラルンプールの中心部から車で約40分の距離にあるバンギという町にキャンパスがあります。QS World University Rankingsでは138位に位置しており、これはマレーシアにある大学の中で2番目に高い数字になっています。
マレーシアの国立大学はマレー系の経済的・社会的地位向上を目的としたブミプトラ政策の影響を受けており、マレー系が入学しやすいシステム・マレー語を主体とした授業や学校設備が基本となっています。UKMも例外なくマレー系学生を優遇する政策を取っているわけですが、個人的に最もマレー系学生との間に隔たりを感じる要素として「マレー系学生と関わる機会があまりにも少なすぎる」ということが挙げられます。
UKMはキャンパス内にバスが走っているほど広く、寮も複数存在します。私が住んでいるKIZ(Kolej Ibu Zain)という寮は留学生と他国から来た学生向けであり、マレー系学生は別の寮に住んでいます。また授業に関しても、一つの授業につき複数存在するクラスの中に留学生向けの授業があり、それが英語で開講されているのみで他の授業は基本的にマレー語で開講されています。つまり学内での生活が完全に区別されている状態であり、意図的に関わりを持とうとしない限りは殆ど交流の機会がありません。
その他にも、マレー系学生向けの寮と比べて留学生向けの寮の家賃が極端に高い、留学生向けの寮ではKIZの約半分の値段で同じような食事がとれるなど、マレー系優遇の政策を感じられる場面がいくつかあります。
【授業について】
International Marketing
International Economics
International Business
Introduction to Intercultural Communication
第1セメスターでは、上記4つの授業を履修しました。
上の3つは経済学部(FEP)の授業で、経済学の基礎知識を学ぶことの出来る内容となっており、科目間で重複する内容も多くありました。特別難しい内容を扱っているわけではないものの、今まで経済学の授業を履修したことが無く知識ゼロの状態からスタートしたため、ついていくのが難しく感じる場面が多かったです。
4番目の授業は社会学部(FSSK)の授業で、自分のような社会学部所属ではない学生(自分はFEP所属)も取ることが出来ました。授業の実施方法は、2~30人程度のグループに分けて行われるオリエンテーションとすべてのグループが集まって大きな教室で行われるレクチャーの二部構成になっていました。異なる文化を持つ人とのコミュニケーションにおいて必要な心構えや知識を学ぶことを目的としており、最初のオリエンテーションではグループワークを、そのあとのレクチャーでは知識のインプットをといった形で、少人数と大人数の利点をうまく生かした授業運営がなされていました。
全ての授業に共通して言えることとしては「グループワークやプレゼンを非常に重視している」ということです。東洋大学ではそれらを積極的に行っていたのは英語の授業のみで、他の授業は教授の講義を聞くことが中心でした。それらは学生の積極的な授業参加を促す効果があるのに加え、テーマが授業内容に関連していればよい復習の機会にもなります。東洋大学でも、英語の授業以外でも積極的にそれらを取り入れることで、授業をより学びのあるものに出来るのではないかと思います。
【マレーシアでの生活について】
このコーナーでは、「食」、「衣服」、「お金」の3つに分けてマレーシアでの生活について紹介します。
初めに食についてですが、「豚とお酒(調味料含む)が一般的には提供されない」、「とにかく野菜が摂れない」、「極端に甘い・辛い料理や飲み物が多い」といった特徴があります。1つ目の豚肉とお酒が提供されないことに関しては、イスラム教の文化が関係しています。「マレーシアについて」のコーナーでも述べたようにマレーシアはイスラム教を連邦の宗教として定めているため、食文化もイスラム教の食に関するルールに則った形で発達しています。そのため、日常的に口にする食べ物や飲み物は基本的に豚やお酒を含んでいません。しかし、マレーシアは多民族国家であり宗教も幅広いものが信仰されているため、豚やお酒を口にしても問題ない人もかなりいます。代表的な例は中国にルーツを持つマレーシア人(マレーチャイニーズ)で、彼らの料理には豚やお酒を含んだものも多く存在しています。このように、一口に「マレー料理」といっても様々なジャンルがあり、それぞれが全く異なる特徴を持つことはマレーシアの食文化における非常に面白い点だと思います。
続いて衣服についてですが、こちらもイスラム教の文化の影響を強く受けています。イスラム教の衣服に関する規定は男女で差があり、女性の方が比較的ルールが厳しいです。まず男女共通のルールですが「へそから下の肌を露出しないこと」が義務付けられています。したがって、ハーフパンツやサンダルの着用は認められていません。このルールはムスリム以外にも適用される場合があり、UKMではオフィシャルな場(テスト、式典など)でこのルールに違反する衣服を着用することが全学生に対して禁止されています。また、女性は先ほどのルールに加え「顔と手以外の体を隠すこと」が求められています。そのため、ムスリムの女性は年中長袖を着用し、頭にはヒジャブという髪の毛を隠すための布を巻いています。
また、衣服に関するもう一つの話として「意外と薄手の長袖必須」というものがあります。マレーシアは年中高温多湿な気候であるためずっと半袖で過ごせそうなイメージがありますが、とにかく公共交通機関や屋内が寒いです。直接的な因果関係があるのかは不明ですが、どんなに暑くても顔と手以外を露出してはならない女性に合わせた温度設定になっているのかなと個人的には考えています。かといって屋外は半袖の方が快適なので、小さくしてバッグの中に入れることの出来るカーディガンなどを持ち歩くのが良いでしょう。
最後にお金についてですが、“現地の人が使うものに関しては”日本の半額~3分の2程度の値段で購入・利用することが出来ます。私が住んでいる寮では料理が基本的に禁止されているため生鮮食品の値段は分かりませんが、水1.5Lが約30円で買えたりします。特に安いなと感じるのは移動手段です。初めにタクシーについてですが、マレーシアではGrabというアプリを筆頭に配車アプリが盛んに利用されており、私も目的地の近くに駅が無い場合などによく利用しています。例えば、私が住んでいる寮からクアラルンプール国際空港までは23kmありますが、約2,000円で移動することが出来ます。マレーシアは日本ほど公共交通機関が発達していないため、同じ距離を移動するのでも車だと半分以下の時間に抑えることが出来るケースもしばしばです。しかし、倍以上の時間がかかるとしてもあえて利用するほど公共交通機関は驚異的な安さを誇っています。配車サービスの価格と比べるとその差はかなり大きく、配車サービスでは約1,300円かかる目的地に約170円で移動することが出来ます。そのため、一人で移動するときは極力公共交通機関を使い、複数人で移動する(=割り勘できる)場合は配車サービスを利用するといった使い分けをしている人が多い印象です。
【第1セメスターを過ごしての感想】
自分とは何なのかをとにかく考え続けた半年間だったなと感じています。初めての海外で何もかもが不慣れだったり、他国から来た留学生と比べると英語が堪能でなかったりと、不安や自信喪失につながる機会がいくらでもありました。特に人間関係については気苦労が絶えず、自分に自信が持てないことで交流することに対して消極的になり、より仲良くなるチャンスをたくさん逃してしまったなと感じています。また、忙しい日々の中で新たなことへの挑戦が億劫になり、周囲のようにマレーシアならではのことを積極的に楽しむことが出来ず、留学自体が向いていないのではないかと感じる場面も多くありました。
これらの問題について、私は改善点を見つけて自分を変化させていくことで対応しようとしていました。特に未知の体験に対する消極的な姿勢には大きな改善が見られ、有名なレストランやモスク(イスラム教の礼拝堂)への訪問、マレーシアの他の地域への旅行などが前向きに挑戦できるようになりました。しかし、どんなに行動面で改善が見られても、それが自分の自信につながることはありませんでした。元々劣等感や苦手意識から始まっているためか行動を改善することが出来ても「それくらいできて当然だ」と考えて成長を評価することが出来ず、また新たな問題点を発見してはさらに自信を無くすといった悪循環に陥っていました。
その経験を踏まえ、最近は「自分が既に持っている物をどのように活かすか」を考えるようにしています。自己実現のためには成長が不可欠ですが、成長した自分を認めてあげることが出来なければいつまでたっても満足することが出来ません。成長や変化に自信のすべてを見つけようとするのではなく、現状に満足した上でさらに成長するにはどうしたら良いかという姿勢でいることで、目先の成功や失敗に左右されづらい自分になっていけるのではないかと思っています。
【最後に】
英語力や世界規模で物事を考えることの重要性が叫ばれている現代において留学に関心を寄せる人は増加しており、留学に行くこと自体はだんだん珍しくなくなっているのではないかと思います。また、留学の理由としてよく挙げられる「語学力の向上」や「異文化理解」といった取り組みは、実はインターネット等を通して国内でも出来てしまうものがほとんどです。このような状況下で留学に行く意味を見出すために、私は自己理解を深めることが大切だと考えています。これは留学に来てから実感したことですが、一人ひとりの留学に対する向き合い方は驚くほど違いがあります。英語力を向上させる目的で来る人もいれば既にネイティブレベルで会話が出来る人もいますし、いろいろな国の大学に出願している人もいればマレーシア一択だったという人もいます。つまり、留学の目的に正解はないということです。むしろ、先ほど述べたような一般的な留学の理由に縛られている人ほど、国内で勉強することと上手く差別化できないのではないかと思います。
留学に行く以上皆さん何らかの理由や目的があるかと思いますが、それに縛られる必要はありません。自分のことをよく理解して等身大で日々を過ごしていれば、自分ならではの留学体験が自然と出来るのではないかと思います。「8割くらいで頑張って、疲れたときはしっかり休む」。留学において人と関わることは避けて通れないため中々自分のペースを維持することは難しいですが、無理なく前に進み続けるためには必要なことだと思います。お互い、頑張りましょう。
【フォトギャラリー】
マレーシアで最も有名な観光地の一つであるペトロナスツインタワー(Petronas Twin Towers)。片方の塔を日本の建築会社が、もう片方を韓国の建築会社が建設したそうです。
UKMの入り口にあるオブジェ。背景の生い茂る木々からもわかるように、非常に自然豊かなキャンパスです。(食べ物を持ち歩いているとサルにとられることも…)
マレー料理の定番ナシレマ(Nasi Lemak)。マレー語で「ナシ」は米、「レマ」」はココナッツミルクを意味しています(米がココナッツミルクで炊かれています)。こちらは、個人的ベストNasi LemakであるVillage Park Restaurantのものです。
【参考文献】
外務省. (2024, March 27). 外務省 Ministry of Foreign Affairs of Japan. マレーシア基礎データ | 外務省. https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/malaysia/data.html
大井にいな. (2024, December 15). NativeCamp.Blog ネイティブキャンプ英会話ブログ. マレーシアの祝日は年に何日?日数や気をつけるべきこともご紹介!. https://nativecamp.net/blog/20241215_study_abroad_malaysia
Malaysia Truly Asia. (n.d.). マレーシア基本情報. https://www.tourismmalaysia.or.jp/basicinfo/02_travelinfo.html
Universiti Kebangsaan Malaysia. (2024, June 5). UKM Soars in QS Rankings. https://www.ukm.my/kelestarian/news/ukm-excellent-in-the-qs-world-university-rankings-2025/
(2025年4月7日)