国際学部国際地域学科の沼尾ゼミでは、2026年7月28日から31日までの4日間、福井県鯖江市でゼミ合宿を実施しました。
鯖江市と聞くと「めがねのまち」を思い浮かべる人は多いと思います。ゼミでは、みんなが合宿前にそうしたイメージを強く持っていました。しかし、実際に地域を歩き、ものづくりの現場を見て、そこで働き、暮らす人たちの話を聞いていくと、「めがねのまち」という言葉だけでは捉えきれない鯖江の姿が見えてきました。
現地では、鯖江の眼鏡産業の歴史や産地の特徴について学びました。
今回の合宿では、「地域の産業とまちづくりは、どのようにつながっているのか」を1つのテーマに掲げました。事前に文献やウェブサイトなどで地域について調べ、それぞれが自分なりの問いを持ち、現地に入りました。
【鯖江駅改札口にかかる「めがねのまちさばえ」の案内】
【めがねミュージアムで集合写真】
1.めがねミュージアム
最初に訪れためがねミュージアムでは、眼鏡の成り立ちとともに、鯖江の眼鏡産業の歴史と、数多くの企業や職人が工程を分担しながら1つの製品をつくり上げる産地の仕組みについて学びました。
【めがねミュージアムの展示について説明を受ける】
【めがねミュージアム内のショップで、特徴のある眼鏡の紹介を受ける】
2.鯖江市役所訪問
次に鯖江市役所を訪問し、事前に準備した質問をもとに、行政の立場から地域産業の現状と課題、まちづくりへの取り組み、人口減少対策などについて、各課の職員の皆様からお話を伺いました。また市議会議員江端一高先生からもお話をいただきました。
【鯖江市役所でのヒアリングの様子】
3.企業訪問
めがねをつくる企業にも訪問しました。株式会社シャルマンでは企画から製造、販売までを手掛けるものづくりについて、KISSOでは眼鏡づくりで培われた素材や技術をアクセサリーという新たな商品へ展開する取組について学びました。ボストンクラブでは、眼鏡づくりに携わる方々のお仕事と暮らしへの思いについてお話を伺う機会も得ました。
あるゼミ生は、鯖江のめがね産業について「地元の人だけで守られているのではなく、その魅力に惹かれて外から来た人も加わりながら続いていることに気づいた」と振り返っています。実際の製品や現場に触れることで、「産地」という言葉の向こう側にいる人々の仕事に触れる機会となりました。
調査対象はめがね産業だけではありません。福島織物では繊維産業の工場を見学し、河和田地区では越前漆器についてお話を伺い、沈金体験を行ったグループもあります。鯖江には眼鏡だけでなく繊維や漆器などの産業があり、高い技術と品質を積み重ねながら地域経済を支えてきたことを実感する機会となりました。
同時に見えてきたのが、「伝統を守る」とは何を意味するのかという問いです。昔からの技術をそのまま残すだけでなく、新しい商品を生み出すこと、外部に魅力を伝えること、若い担い手を育てることも、産業を未来につないでいくためには必要です。
【福島織物株式会社で、特殊な繊維(電力ケーブル用被膜基布)について説明を受ける】
【沈金体験で作品を作り、職人さんと一緒に記念撮影】
「見る」だけではなく、自分たちも体験しながら地域産業について考えました。
4.市民主役のまちづくりについて考える
もう一つの重要なテーマが、鯖江市の「市民主役のまちづくり」です。
NPO法人さばえNPOサポートやNPO法人エル・コミュニティ、河和田公民館など、地域で活動する方々を訪ね、市民が地域とどのように関わり、自分たちの「やりたい」を形にしているのかを聞きました。
「若者が出ていくことを止めるのではなく、まずは若者が魅力を感じるまちをつくる」という考え方を伺い、共感を覚えました。若者を地域に「残す」ことだけを目標とするのではなく、地域でさまざまな経験をし、人と出会い、地域を知る機会をつくる。その経験が、将来もう一度地域と関わるきっかけになることを学びました。
【NPO法人エル・コミュニティでヒアリングのあと記念撮影】
5.オープンファクトリーへの取り組み
地域産業とまちづくりをつなぐ取組として、一般社団法人SOEからはオープンファクトリーのイベント「RENEW」について、全員でお話を伺いました。RENEWは、工場や工房を地域内外の人々に開き、職人と話し、ものづくりの現場で交流や体験をすることのできる取り組みで、毎年秋に開催されています。
ゼミ生からは、「完成した商品を見るだけなら東京やインターネットでもできるが、製造工程を見たり、職人の方と直接話したりすることで商品の印象が変わる」という声がありました。地域の産業そのものを「見る・知る・体験する」ことが、観光となり、人と産地との新しい関係をつくる「産業観光」について考える機会となりました。
ものづくりを外に「見せる」ことが、産業振興や観光、地域づくりにどうつながるのかを考えました。
【一般社団法人SOEでオープンファクトリー「RENEW」についてお話を伺う】
鯖江市役所や福井県眼鏡協会、鯖江商工会議所、眼鏡関連企業などへのヒアリングを重ね、ものづくりの技術だけでなく、産業を支える政策、人材育成、販路開拓、ブランドづくりなどについてお話を伺うとともに、まちづくりや移住政策についても意見交換を行う機会となった4日間でした。
地域で活動する方々との交流や意見交換を通じて、現地に行かなければなかなか得られない多くの気づきをいただきました。事前に調べて「分かったつもり」になっていたことが、現地で一人の方の話を聞くことで揺らぐこともありました。ある人の話と別の人の話が異なり、「なぜだろう」と新しい疑問が生まれることもありました。調査を通じて得られた知見をもとに、これから報告書をまとめていきます。
ご多忙のなかヒアリングや見学を受け入れて下さり、率直なお話を聞かせてくださった鯖江市の皆様に、心より御礼申し上げます。なお、このゼミ合宿は鯖江市学生合宿型まちづくり活動支援の助成を受けました。ありがとうございました。
沼尾ゼミ3、4年生一同