東洋大学国際学部のプロジェクト・スタディ科目「国際地域学研修 川内村研修2026」を実施しました。今回のテーマは「地域共創フィールドワーク:福島県川内村における地域の『価値』の可視化と発信」です。学生たちは3日間の現地研修に臨みました。
【研修1日目】 伝統芸能「三匹獅子舞」と「かわうちラボ」から学ぶ、地域の文脈と復興への歩み
初日となる1日目のテーマは「文脈の理解」です。元川内村復興対策課長、川内村第一行政区長、一般社団法人かわうちラボ理事である井出寿一さんより、川内村の歴史や東日本大震災の全村避難の記憶、そして地域の伝統芸能についてお話を伺いました。
上水道のない村として地下水資源を大切にしてきた歴史や、「かわうち 恵の水」誕生のストーリーが印象的でした。また、伝統芸能「三匹獅子舞」についてお話をお伺いしました。三匹獅子舞は、村内4つの行政区で約400〜450年にわたり受け継がれている県指定重要無形民俗文化財です。
衣装や太鼓、舞の風情が地区ごとに異なり、雄獅子(太郎・次郎)が雌獅子(花子)を奪い合う情熱的なストーリーです。児童減少に直面する中、かつては男児限定だった役手を女子や他の地区の子供たちにも広げ、小中学校や行政区全体で受け継いでいます。
「400年続いた歴史を自分の代で絶やすわけにはいかない」という井出さんの言葉に、地域コミュニティの強い絆と誇りを感じました。
続いて「一般社団法人かわうちラボ」の佐藤さんと中野さんから、村の復興と魅力発信に向けた多角的な取り組みについてお話を伺いました。
一般社団法人かわうちラボでは、「川内の郷かえるマラソン大会」や「かえるの郷トライアスロンinかわうち」などを通じ、全国から人が集まる仕組みづくりを推進しています。移住・定住支援では、空き家・空き地バンクの運営や、トレーラーハウスを活用した「お試し居住体験」など、移住者がチャレンジしやすい環境を整備しています。
中野さんからは「個人の小さな『やりたいこと』が地域全体に広がりやすい」というリアルな体験談が語られ、川内村の新しい共創の形を実感しました。
【研修2日目】農業体験と村の「価値」を探るフィールドワーク
2日目のテーマは「現地の体験とフィールドワーク」です。川内村の豊富な自然と農業、そして地域資源を体感する1日となりました。
午前中は、川内村の農業や特産品を推進する川内野菜勉強会に参加し、農業体験を行いました。標高400〜600mの阿武隈高地に位置する川内村は、昼夜の寒暖差を生かした美味しい野菜作りに最適な環境です。
実際にフィールドに出て土に触れ、作物を育てる農家さんの工夫や情熱を直接体感しました。普段なにげなく口にしている野菜が、地域の豊かな自然と農家さんの手によって大切に育てられていることを実感できる貴重な時間となりました。
午後は、村の産業の現場を巡りました。高原の気候を生かしたワイン用ブドウの栽培とワイン造りに挑戦しているかわうちワイナリーを訪問しました。
原発事故後の地域再生や新たな産業創出を目指した挑戦の姿はとても力強く、新しい川内村のブランドとしての広がりを感じました。
全体訪問を終えた後は、各グループに分かれてフィールドワークを開始しました。各グループが設定したテーマに基づき、村内でのヒアリングや現地調査を行いました。村の方々に実際にお話を伺う中で、文献や講話だけでは見えてこなかった「村のリアルな暮らし」や「隠れた魅力」の発見を目指しました。
【研修3日目】遠藤村長からの講話と草野心平記念館
最終日の午前は、川内村役場に伺いました。 お忙しい中、遠藤雄幸(えんどう ゆうこう)村長が直接学生のためにご講話の時間を割いてくださいました。ご講話の中で特に心に残ったのは、東日本大震災および原発事故からの歩みと、これからの川内村の未来に向けた強い想いです。
まず、全村避難という未曾有の危機から「帰村宣言」に至るまでの決断や、手探りで進められてきた除染作業、生活インフラ・教育環境の整備といった復興への道のりについて伺いました。
単に元通りの状態に戻すだけでなく、村では新しい挑戦が次々と始まっています。ワイン事業をはじめ、「カフェ」や「クラフトジンの製造」、「生花店」など、若者による起業や新産業の育成にも積極的に取り組まれている姿が印象的でした。
そして何より深く私たちの胸に刺さったのは、村長の考える「復興」の本質です。 村長は「単に建物を建てたりインフラを整えたりするハード面の復旧だけが復興ではない。住民一人ひとりが生きがいや誇りを取り戻し、地域のアイデンティティを再構築することこそが真の復興である」と語られていました。
質疑応答の時間には、村内での雇用や将来の展望に加え、おすすめのスポットや特産品についてなど、学生たちの素直な疑問に一つひとつ熱い想いを込めて気さくにお答えいただきました。
最後に、蛙の詩人として知られる草野心平の「草野心平記念館(天山文庫)」を訪問しました。川内村を深く愛し、村人とも親交の深かった草野心平ゆかりの展示や資料に触れることで、川内村の持つ豊かな文化や歴史的背景を肌で感じることができました。
【研修のまとめ】
今回の3日間の川内村研修を通して、現地でしか聞けない生の声を聞き、自分の目で見て体験することの大切さを改めて実感しました。川内村の皆さま、心温まる受け入れと貴重なお話を本当にありがとうございました!
今後は事後研修として、川内村とZOOMで繋いで研修成果を川内村に還元します。
(科目担当教員:国際学部国際地域学科 牧野冬生)